M109 |
NGC2903 |
M109 |
NGC2903 |
![]() |
いっかくじゅう座付近の星図(©︎Wikimedia Commons) |
昨日はアスタキサンチンについての記事を配信しました。アスタキサンチンの話題をもう一つ、提供しましょう。
鮭(サケ)の身(筋肉)には赤い色がついていますが、じつは白身の魚です。その身が赤いのは、エビと同じくアスタキサンチンによるものです。エビもサケも、自分でアスタキサンチンを作り出すことはできず、食べ物から取り入れます。では、アスタキサンチンはもともとどんな生き物に存在していたのでしょう?
藻類に「ヘマトコッカス」とよばれる種類があり、この種の藻類は通常の環境ではアスタキサンチンをもちません。強い太陽光や高い温度などのストレスを受ける環境にさらされると、ヘマトコッカスはアスタキサンチンを作り出します。アスタキサンチンは活性酸素から細胞のダメージを防ぐと説明しましたが、このはたらきによってストレス環境下でもヘマトコッカスは生き延びることができるのです。
ヘマトコッカスは動物プランクトンの餌となり、さらにこのような動物プランクトンをエビやサケが食べることで、アスタキサンチンが体内に蓄積されていきます。つまり、食物連鎖によってエビやサケにたどり着くのです。この事例のように、環境に存在する物質の濃度よりも高い濃度で、生物の体内に物質が存在することを「生物濃縮」といいます。
天然のサケは、自然環境に存在するアスタキサンチンを取り入れた結果、身が赤くなりますが、養殖されているサケはそのままでは白身の魚に育ちます。かつて『ジェーン・グドールの健やかな食卓』(日経BP社 2011年)を共訳で出版したことがあります。ジェーン・グドールはチンパンジーの生態について研究する動物行動学者です。この書籍は、自然環境に配慮した食生活がいかに重要であるかを述べたもので、その中にサケの養殖についての記述があったことを思い出します。養殖されているサケの餌には、ピンク色の染料が混ぜられているそうです。論文(参考1)を調べてみると、サケの養殖では、餌にアスタキサンチンおよびカンタキサンチンを混ぜているようです(添加量は農林水産省令によって上限が決められています)。カンタキサンチンもアスタキサンチンと同様のカルテノイド色素です。
天然の環境と養殖の環境とでは、さまざまな違いがあります。「白身のサケ」では市場価値が下がるということから、わざわざ餌にアスタキサンチンなどの色素を混ぜて育てている、というわけです。もし、私たちが「白身のサケ」でも同じように購入するのであれば、わざわざ色素を混ぜる必要はない、ということなのでしょうが…
(参考1)K. Suzuki, et al.「養殖サケ・マス類中のカロテノイド系色素及び酸化防止剤の分析」Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst.P.H., 57, 219, 2006
2024年 10月後半から、夕方の西の空に見えるようになった「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)」ですが、10月 20日(日)に望遠鏡で確認してからは天気に恵まれず、観測できませんでした。
11月 3日(日)は久々に東京地方も晴れ渡り、望遠鏡を持ち出して観測しました。先月の夜よりは気温も下がり、しっかりと着込まなければいけません。
双眼鏡を使って探してみましたが、残念ながら私にはわかりませんでした… でも、望遠鏡では確認できました(というより、探してくれた?)!
![]() |
紫金山・アトラス彗星(Seestar S50 で撮影) |
11月12日(日)のNHKラジオ「子ども科学電話相談」で、素粒子に関係する質問の中で、電話の向こうのおともだちから「きりばこ」の話題が出ました。番組では「きりばこ」について詳しく説明しませんでしたが、私の周辺の大きなおともだちから、「『きりばこ』って、なに? 「桐の箱」かと想像してしまった…」と話題になりました。
スタジオで回答していたときにはまったく気がつきませんでしたが、「きりばこ」という音を漢字に変換すると、多くの人が「桐箱」を連想しますね。
話題にされていたのは「霧箱」です。放射線の存在を目で見ることができるように工夫された実験装置です。箱の中で気体のアルコールが過飽和状態になっています。過飽和状態というのは、いまにも液体に変わってしまう状態になった気体だと考えましょう。ちょっとした刺激を受けると、気体はすぐに集まって小さな液体の粒になってしまいます。
放射線には「電離作用」があります。物質を電気を帯びたイオンの状態にしてしまうのです。そのため、霧箱の中を放射線が通過すると、通り道にそって発生したイオンが刺激となって小さな液体の粒になります。この液体の粒がたくさん集まって「白い線」になって見えるのです。
科学館などで見ることができますが、石川県が提供している霧箱の動画がありますので、ご覧ください。
9月10日(日)のNHKラジオ「子ども科学電話相談」では、なかなか難しい質問が飛び出しました。小学2年生のおともだちが、「有機物と無機物について考えていたら、化石が有機物なのか無機物なのか疑問に感じた」と質問したのでした。
小学2年生で無機物・有機物が気になるところなど、将来が有望なおともだちです。
無機物と有機物は「炭素があるかないか」だと考えている人も多いかもしれませんが、じつはそうではありません。無機物・有機物と生き物とは関係ありますが、生きているから有機物、生きていないから無機物というわけでもありません。
19世紀の中頃、「地球にもともとあるものと、実験室でつくることができるものを無機物、生物によってつくられるものを有機物」とグループ分けをしようとの提案がなされました。ところが、科学の発展により、これではまずい状況が生まれてしまいました。尿素(CO(NH2)2)を実験室で合成することができるようになったのです。その後、当時「生物にしかつくり出せないもの」と考えられていた物質が次々と実験室で合成されるようになり、無機物・有機物の定義を変えなければならなくなりました。
有機物は「物質の基本骨格に炭素をもつもの」、そして無機物は「有機物でないもの」というようになりました。炭素を含んでいても「基本骨格に炭素をもっていない」からと説明できます。たとえば、メタン(CH4)や二酸化炭素(CO2)は炭素を含みますが、有機物とはしません。ただ、現代では「有機物と無機物の明確な区別はない」とも言われているようです。
さて、化石は無機物・有機物のどちらでしょうか。化石とは「人類が出現する前の時代の、生物の遺骸や痕跡」を化石と言います。生物が生きている間、もちろんそのからだは有機物でできていますが、自然界で死んでしまうと微生物によってどんどん分解されていきます。このとき、とても珍しいことではありますが、条件が揃えば化石になって地層の中に保存されます。
化石は堆積岩中で発見されますが、生物の遺骸が湖や海の底に沈み、圧力を受けながら時間が経過して化石ができる(これらのほとんどは分解されてしまうので私たちの目には触れない)、というわけです。骨の中の成分が周りの土などの鉱物と置き換わっていくことで硬くなり、やがて化石になるのです。このときは炭素を含んだ成分は鉱物に置き換わっているので、無機物といえるでしょう。
しかし、とくに条件がよければ、古代生物の骨の化石に、爪の成分の「ケラチン」や皮膚をつくる「コラーゲン」がそのまま残されていることがあります。このようなものを研究して、古代生物の皮膚の様子などが明らかになっています。繰り返しになりますが、このようなタンパク質が残っているのは非常に稀なケースです。
本日放送されたNHKラジオ「子ども科学電話相談」で、
みかんを触った手でパソコンを操作してはいけない、とお母さんに言われました。プラスチックが溶けてしまうからと言われたのですが、手は溶けないのですか?
という質問がありました。みかんに含まれるなにが、プラスチックを溶かすのでしょうか。
みかんをはじめとする柑橘類の皮には、「リモネン」という物質が含まれています。リモネンには柑橘類に特有の香りをもった物質です。このリモネンが、プラスチックを溶かします。しかし、すべてのプラスチックを溶かすわけではありません。一言にプラスチックと呼ばれるものにも、いろいろな種類があります。ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレンなどです。プラスチック製品には、「樹脂識別コード」と呼ばれるマークがついている場合があります。リサイクルのために付けられたマークですが、三角形に配置された矢印の中に、数字が示されたものです。もし、PETボトルが身近にあれば、ぜひ見てみましょう。三角形の矢印の中に「1」と示されているはずです。ポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂識別コードが「1」なのです。
リモネンで溶けるプラスチックは、樹脂識別コードで6番になっている「ポリスチレン」です。非常に幅広く使われている素材で、文房具や雑貨にも使われます。緩衝材や保冷ボックスなどに使われる「発泡スチロール」は、ポリスチレンに空気を大量に含ませて成型したものです。
私たちの体はポリスチレンでつくられていないので、みかんを触っても手が溶けることはありません。また、ジュースをつくるためのジューサーなどにプラスチックが使われていることがありますが、これらが溶けてしまわないのは、ポリスチレン以外のプラスチック製品が使われているからです。
さて、どうしてリモネンはポリスチレンを溶かすのでしょう。ここからが、番組で触れなかった内容です。
プラスチックにはいろいろな種類があると説明した中で、「ポリ◯◯」という物質を示しましたが、「ポリ」とはたくさんつながった、という意味です。ポリスチレンとは、スチレンがたくさん繋がっている状態になった物質なのです。
リモネンは、スチレンととても似た構造をしています。有機化学を学んだ人であれば、ベンゼン環をイメージできるでしょうか。スチレンもリモネンも、ともにベンゼン環をもつ化合物で、構造式がよく似ているのです。
ポリエチレンにリモネンが触れると、ポリスチレンとなってたくさん繋がっているスチレンが、リモネンに置き換わってしまいます。すると、せっかく繋がっていたエチレンの鎖がぷっつりと切れてしまうのです。これが、ポリスチレンが「溶けた」状態です。
身の回りにポリスチレンと柑橘類があったら、どんなふうに溶けるのか、確かめてみてください。ポリスチレンに柑橘類の皮を擦り付けたら、どんな感じになるでしょう? ぜひ、お試しください。
7月 30日(土)、法政大学多摩キャンパスの近くにある団地「グリーンヒル寺田」で、夏休み恒例のイベント「子ども理科実験教室」を開催しました。グリーンヒル寺田では、毎月最終月曜日に「星空探検隊!」という天体観測会を行なっていますが、「星空探検隊!」に加えて夏休み特別バージョンとして開催しているものです。もちろん子どもだけでなく、大人も参加できるイベントです。
午後1時から午後4時 30分まで、休憩時間をはさんで3種類の理科実験を提供しました。実験は、
![]() |
小さな「つぶ」をつくってみました。青いイクラ⁈ |
健康都市大学「やまとみらいカレッジ」で、8月27日(土)から毎週土曜日、5回連続で「宇宙の現在・過去・未来」と題した講演会が大和市桜丘学習センターで開催されます。講師は藤田貢崇が務めます。
宇宙に対するあなたの関心はなんでしょう。
宇宙の始まり、宇宙の将来、この宇宙に存在するいろいろな天体、あるいは地球外生命体などでしょうか。あなたの宇宙に対する疑問を解き、さらなる疑問につなげる講義が始まります。日程と内容をお知らせいたします。詳細はこちらのウェブサイトをご確認ください。
「広い世界」の代名詞となる「宇宙」ですが、その大きさを実感することは難しいことです。いろいろな方法で、宇宙の広さを実感し、どうやってその大きさを知ることができるのかを学びましょう。
地球上にはものが溢れています。では、宇宙空間はどうなのでしょうか。地球の近くの天体についての知識を確認しながら、太陽系や銀河系などについて学びましょう。
私たちにとってはとてつもなく巨大な銀河系でも、宇宙全体を考えれば小さなもの。銀河系を抜け出て、この宇宙にはどんなものがあるかを写真などを見ながら理解しましょう。
広い宇宙の始まりはビッグバンから、とはよく聞く言葉ですが、 そのさらに前には何があったのでしょうか。宇宙の始まりを探りながら、 とても小さな世界についての知識を深めましょう。
宇宙のはじまりがわかれば、宇宙のこの先も知りたくなるでしょう。現代天文学で考えられている宇宙の将来像を学び、この宇宙に私たちが存在する意味について、考えてみましょう。
現在、申し込みを受け付け中です。受講対象は「市内在住・在勤・在学の方」とされていますが、該当しない方でも、ご希望であれば
大和市桜丘学習センター 046-269-0411
までお問い合わせください。みなさまの受講をお待ちしております。