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2026年1月3日土曜日

1月の満月

東京は夕方から冷え込みが厳しくなりました。夜空は雲一つなく、月もきれいに見えています。昨日の記事にあるとおり、今夜は 2026年最初の満月です。多摩キャンパスで観測した満月がこちらです。

2026年 1月 3日の満月(@法政大学多摩キャンパス)

月の黒い部分を、餅つきするウサギに見立てることをご存知と思います。昔はそのように想像しながら月を眺めたのでしょう。先日、観測会でそのような話をしたところ。「どう見たら、そんなふうに見えるのだろう?」と嘆く人も…   この影を見て、ウサギを思いつくのは確かになかなか難しいなぁ、と説明しながら私も感じました。

アメリカの先住民が名づけた1月の満月の別名は「ウルフムーン」。寒い冬で食糧が極端に少なくなるこの時期、飢えを嘆くオオカミが遠吠えするという伝承によってつけられた呼び名とのことです。しかし、この時期のオオカミの遠吠えは繁殖期の始まりで仲間を見つけるためのものであることが現代の科学的な理由です。

2026年1月2日金曜日

2026年の満月

この時期、夕方6時は真っ暗です。研究室でふと気がつくとそんな時間。外はすでに暗くなっており、今日は雪になるとの天気予報だったので外を見ると、ちらちら白いものが舞っています。

スマートフォンに示されているニュースの見出しが「関東地方の一部で大雪」となっていたので、本格的に降る前に帰宅したところ、短い時間ではありましたが、しっかり雪が降りました。ただ、気温が比較的高いようで、積もることもなく、この時間には雪も止んだようです。

週間天気予報では、天気が崩れるのは今夜のみで、しばらくは天気がよいようです。明日の3日(土)は満月です。2026年の満月は 13回。
1月 3日
2月 2日
3月 3日
4月 2日
5月 2日
5月 31日
6月 30日
7月 29日
8月 28日
9月 27日
10月 26日
11月 24日
12月 24日

これらのうち、地球に最も近いところに月が位置する満月は 12月 24日、逆に最も遠いところに月が位置する満月は 5月 31日となります。「星空探検隊!」の参加者のみなさんと、見かけ上はわかりにくい月の大きさの変化を、写真で撮影して比べる約束をしています。しっかり写真に収められるように、満月の夜は天気が良くなることを祈っています。

2025年12月30日火曜日

ホットプレートの上の湯気

28日(日)の NHKラジオ「子ども科学電話相談 冬休みスペシャル」で取り上げられた、「ホットプレートからの湯気はどうしてまん中に集まるの?」という質問。

質問してくれたお子さんは、ホットプレートの蓋をした状態で、蓋の周りから出てくる湯気がまん中に集まることを不思議に思って質問してくれました。これは、湯気のような形のない「流体」には壁に沿って移動する「コアンダ効果」がはたらくので、出てきた湯気は蓋に沿って流れていくのです、と説明しました。コアンダ効果は多くの人が気づいている現象ですが、その現象に名前があるとは意外だったようで、メモに書き留めた人もいらしたようで…

ホットプレートは餃子や焼肉、お好み焼きなどで使うことが多いでしょうか。そのようなときには換気を十分にしているでしょうから、湯気が静かに上るところを見るのは難しいかもしれません。

空気の流れのないところで蓋をしていないホットプレートからでる湯気も、まん中に集まります。なぜでしょう?

ホットプレートは面が均等に加熱されているわけではなく、真ん中の部分が強く加熱される製品が多いことと思います。ホットプレートの上の空気は上昇気流となって上に進みますが、中心部分の温度が高いため、まん中の空気がより速く進みます。その部分の空気が少なくなってしまいますが、自然界は真空を嫌うため、速く進んで空気が少なくなった部分には周りから空気が流れ込みます。そのため、湯気はまん中に集まってくるのです。

焚き火で燃えている炎がまん中に集まるのは、これと同じ原理です。

年末年始、ホットプレートを使う機会も増えそうですので、ぜひ立ち上る湯気も気にして楽しい団らんのひとときをお過ごしください。

2025年7月20日日曜日

0.99999… は1?

 7月 20日(日)の NHKラジオ第1『子ども科学電話相談』では、久々に算数の質問がありました。算数・数学は自然科学の基礎です、と言うと具合が悪くなる(?)人がいるかもしれませんが、算数の時間に不思議だな、という気持ちが「おもしろい」につながるかもしれません。今日質問してくれたお友達も、算数をおもしろいと感じていると放送で答えてくれました。

0.9999… のように、小数点以下に同じ数字が繰り返し現れる小数を循環小数といいます。

さて、放送中に「 0.9999… と小数点以下に9が無限に続く数字は、じつは1です」とお話ししましたが、なぜだろうと感じた人もいらっしゃるでしょうから、解説しましょう。これは高校生になってから学ぶことだそうです。

いま、0.9999… となる循環小数を x とします。方程式にすると、

x= 0.9999…     ①

となります。

続いて、この x を 10倍したものを考えましょう。小数点以下は、9の数字が無限に続いているので、方程式にすると、

10 x = 9.9999…     ②

となります。

ここで、②の式から①の式を引きます。左辺は左辺で、右辺は右辺で引き算をするのです。

左辺どうしを引く 10 x− x は、9 x になります。右辺どうしを引くとき、 9.9999… から 0.9999… を引くのですが、9.9999… も 0.9999… も同じ 9 が小数点以下で無限に続く数字です。つまり、小数点以下は同じものになるので、9.9999… − 0.9999… は 9 になります。その結果、

9 x = 9     ③

となって、 x = 1 になります。x はなんだったかといえば、下線を引いた部分の「0.9999… となる循環小数」だったので、なんと、0.9999… は1 ということになるのです。

納得していただけましたか?

2025年2月18日火曜日

銀河 M109 と NGC2903

昨日の 17日(月)は、恒例の「おとなの星空探検隊!」でした。法政大学多摩キャンパス周辺は、夕方までは雲がやや多めでしたが、暗くなってからはきれいな星空になり、無事に観測することができました。

金星・木星・火星と惑星の位置を確認して、冬の代表的な星座の一つ「オリオン座」を確認してから、「ヒアデス星団」や「プレアデス星団」を双眼鏡で観測しました。ヒアデス星団とプレアデス星団は、双眼鏡で非常にきれいに見ることができます。特にプレアデス星団は、肉眼でも「もやっと」した白い塊として認識できます。そこを双眼鏡で覗くと、青っぽい色をした星々を見ることができます。

電子望遠鏡 eQuinox2 を使って、いくつかの銀河を確認することもできました。メシエ天体の中では暗くて観測しにくいとされている銀河 M109 を捉えることができました。

M109

これは「棒渦巻銀河」に分類されている銀河で、中心核を棒状の構造が貫いています。棒は銀河の他の部分と同じように、たくさんの星が集まっているものです。その棒の両端から、腕が伸びています。

同じ棒渦巻銀河で、NGC2903 も確認することができました。棒状構造と腕の構造は、NGC2903 のほうがわかりやすいようです。

NGC2903

棒渦巻銀河は、観測されている銀河のおよそ半分を占めています。私たちの銀河系も、棒渦巻銀河です。一般に、棒渦巻銀河の中心核と棒の部分には古い星が多く存在し、腕の部分には若い星が多く存在しています。

私たちの銀河系は、かつて渦巻銀河だと考えられていました。私が小さい頃に見た図鑑にも、銀河系は渦巻銀河として描かれていました。銀河系がどのような形をしているかは、「スピッツァー宇宙望遠鏡」の赤外線による観測などをもとに、銀河系の詳細な地図が研究によって示され、どんどん精確になっています。

銀河系の想像図(©︎NASA/JPL-Caltech/ESO/R. Hurt

銀河系の形は、どんなに精確なデータを手に入れても、想像することしかできません。それは、私たち人類は銀河系全体を見下ろして観測することができないためです。自分自身を見ることができないことと同じです。

その代わり、似たような形の銀河をたくさん観測することで、私たちの銀河系との比較などを行いながら、さらに精確な銀河系の形や特徴を探し出しているのです。

2025年1月30日木曜日

馬頭星雲

もう1月も30日…   この調子だと、2025年もあっという間に終わってしまいそうです。

東京はしばらく雨が降っておらず、空気が非常に乾燥しています。研究室には加湿器がありますが、朝から運転しても湿度が 20% を上回らないという状況で、さらに花粉の襲来を受けています…

空気の乾燥は困りますが、夜の天体観測には最適です。昨日、電子天体望遠鏡 eQuinox 2 内部のミラーの傾き調整を行った後、馬頭星雲に望遠鏡を向けました。




写真の中心部に黒く「馬の頭」のシルエットが浮かび上がっています。この星雲は、オリオン座の三つ星のうち、最も東側(向かって左)の星 アルニタクのすぐ近くにあるものです。この黒い部分は、背景の星からの光を遮っているために黒く見えているところで、この部分にはまわりよりも密度が高くなっている星間ガスや塵が存在しています。このようなものを「暗黒星雲」と呼びます。馬頭星雲は代表的な暗黒星雲です。

2025年1月24日金曜日

時期はずれのクリスマスツリー

昨年のクリスマスは、楽しく過ごされましたか? まだまだ先のことですが、今年のクリスマスも、楽しいことがあるといいですね。

1月になっておりますが、夜空にはまだクリスマスツリーが輝いています。23日の夜に、天体写真を撮ってみました(星雲フィルターを使用し、画像編集ソフトで赤を強調しています)。



この写真に収められている星々の集まりは、「クリスマスツリー星団」(NGC 2264)と名付けられています。「どこがクリスマスツリー?」と聞こえてきそうです… こんなふうに手描きで線を入れれば、それなりに見えるでしょうか? 


青い星々が、クリスマスツリーのオーナメントとなって、ツリーに巻きついているかのように見えませんか? この星団は、地球から 2,500光年離れたところにあり、誕生してから 100万〜500万年しかたっていない若い星が 100個ほど集まっているものです。青い星は若い星で、表面の温度が非常に高くなっていることを示しています。

この星団は、いっかくじゅう座にあり、オリオン座の近くです。位置を確認してみましょう。

いっかくじゅう座付近の星図(©︎Wikimedia Commons)

いっかくじゅう座の領域のかなり上のほうに、NGC 2264 があります。この時期はオリオン座がとても見やすくなっています。風邪などを引かないように、しっかり着込んで(北海道弁では「まかなって」)夜空を眺めてみてはいかがですか?


2025年1月14日火曜日

低温やけど

寒い日が続いています。こんなときに「湯たんぽ」を使いたくなります。インターネットで検索したところ、ペットボトル(温めて販売されていたお茶など)に 50〜60 ℃ のお湯を八分目ほどまで入れ、しっかりふたをして、寝る 10 分ほど前に布団に入れておくという方法が紹介されていました。

「低温やけど」を防ぐため、布団に入るときはペットボトルは取り出します。ところで、低温やけどとふつうのやけどとは、なにが違うのでしょう?

火にかけていた鍋を触れてしまったり、熱湯がかかったりして起こる「高温やけど」とは違い、低温やけどは 44〜50 ℃ くらいの温度のものが皮膚に長時間触れていることで、組織に損傷が生じたものです。条件によっては数分でも低温やけどを起こすことがあります。

見た目はひどくなくても、皮膚の深いところの組織が損傷を受けていることがあり、低温やけどの可能性があるときには医療機関の受診が必要です。初期の症状は
  • 皮膚が赤くなる
  • ヒリヒリした感じがする
というものですが、皮膚の深いところが損傷を受けていると、1週間ほど(あるいはそれ以上)になってから
  • 皮膚の感覚がなくなる
  • 皮膚が黒ずんでくる
などの症状になることがあります。低温やけどのやっかいな点は、表面から見ただけでは皮膚の深いところが損傷を受けているかどうかを判断できない、ということです。
  • 湯たんぽは寝るときには布団から取り出す
  • 電気毛布は寝るときにはスイッチを切る
  • 使い捨てカイロは直接皮膚に当てずに服の上から使う
など、低温やけどにならないように気をつけて、快適な冬を過ごしましょう。「低温やけどになったかな?」と思ったら、速やかに医療機関を受診しましょう。

2025年1月13日月曜日

2024年の夏は暑かった… それだけではなく…

2024年の夏、みなさんはどんな夏だったと記憶していますか? ここ数年は毎年暑く、私などはいつの年が暑かったかの比較ができないほどですが…

欧州連合(EU)の気象情報機関であるコペルニクス気候変動サービスは、2024年の平均気温が工業化以前(1850〜1900年)の平均気温と比較して、1.6 ℃ 高かったと発表しました。

また、アメリカ航空宇宙局(NASA)の発表でも、2024年の年間平均気温が1880年の観測開始以降で最も暑かったことがわかりました。NASAのデータによれば、工業化以前(1850〜1900年)の平均気温との比較では 1.47 ℃ 高かった、と報告されています。

この記録は2年連続で更新されました。「1.5 ℃」の基準は、2015年のパリ協定で採択されたもので、パリ協定は「地球の平均気温の上昇を工業化以前の平均気温に比べて 1.5 ℃ 未満に抑えるための取り組みを進めよう」と国際間で取り決められたものです。

単年度で 1.5 ℃ を越えたからといって人類が今にも滅亡してしまう、というようなことではありません。しかし、 1.5 ℃ を上回る平均気温が長期的に続いてしまえば、気候変動の影響はより深刻になるであろうという研究報告書はいくらでもあります。パリ協定で 1.5 ℃ という基準が採択されたのは、人為起源の変化があるレベルを超えると、気候システムにしばしば不可逆性を伴うような大規模な変化が生じる可能性があると考えられ、これは産業革命前と比べて、 1 ℃ から 2 ℃ の間の気温上昇で生じると考えられたためです。このような「後戻りできなくなる段階」を「ティッピング・ポイント」といいます。今、私たちは確実にティッピング・ポイントに向かっているのです。

NASAゴダート宇宙研究所の Gavin Schmidt 氏によると、今から 300万年前(鮮新世)の温暖だった時代の平均気温は、産業革命前より 3 ℃ 高かったに過ぎない、とのことです。この時代の海面は、現在に比べておよそ 25 m 高かったと考えられています。Schmidt 氏は、最近の150 年間で、鮮新世の暖かさの半分にまで到達しているのだ、と言います。地球の非常に長い歴史の中で成し得た気温変化を、人類による工業化はあっという間に実現してしまったことになります。

地球温暖化に対しては、いろいろな考え方があります。気温の変化は、今、なにかを行ったからといって、すぐに成果の出るものではありません。目先のことだけを考えていればいいような状況とは本質的に異なるのだ、ということを理解しなければならない問題です。



上の動画は、NASA’s Scientific Visualization Studio に収録されています。1880年1月からの月別の地球の平均気温が、1951〜1980年の月別平均気温に比べて、どれほどの差があったかを視覚的に示したものです。

私たちが「過ごしやすい日本の夏」を取り戻すことはできるでしょうか?


2025年1月12日日曜日

インフルエンザが流行中です…

ニュースで繰り返し流れているとおり、インフルエンザが流行しています。現在の方法で統計を取り始めた 1999年以降、最大の患者数になったとか。インフルエンザだけでなく、新型コロナウイルスや、いわゆる風邪に罹ってしまう人も多いようです。

インフルエンザは典型的には、38 ℃ 以上の発熱や悪寒、関節痛、それに全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪に似た症状が現れます(すべての症状がでるとは限りません)。インフルエンザワクチンを接種した人は、感染しても上記のような激しい症状にはならないようですが、それでもつらいことに変わりはありません。

新型コロナウイルスが大流行した 2020〜2021年には、インフルエンザは流行しませんでした。これは、人の接触が減ったことと、多くの人が感染症の対策を心がけたことが原因と考えられています。思い出してみましょう。きっとみなさんも、よく手を洗ったり、除菌シートなどを使っていたはずです。今よりもマスクもつけていた人が多かったのではないでしょうか。

インフルエンザや新型コロナウイルスのような呼吸器の感染症は、主に鼻や口からウイルスが入ってきます。食事の前に手を洗えば、口に入ってくるウイルスの数を減らすことができます。また、ヒトはよく顔を触る生き物です。ついつい、鼻や口元を触っていませんか。手指にウイルスが付着していると、顔を触ることで鼻や口にウイルスが入りやすくなります。

一般的なマスクは直接的にウイルスの侵入を防ぐことはできません。マスクの繊維の隙間は、ウイルスにとっては「スカスカ」です。しかし、感染している人がウイルスの含まれている飛沫を飛ばしてしまうことを防ぐには有効です。感染症は潜伏期間がありますから、その間に他人に広めてしまうことを防ぐという意味で、マスクは有効なのです。

さらにマスクには、鼻や喉の乾燥を防ぐ効果も期待できます。この季節は空気が非常に乾燥しています。鼻や喉の粘膜が乾燥すると、ウイルスや細菌に対する防御力が落ちてしまうので、マスクで乾燥を防ぐことは感染予防に有効です。少しずつ、こまめに水分を摂ることも重要です。

これから受験シーズンになり、感染症により一層、気をつけなければならない人もいることでしょう。自分が感染しないことはとても大切なことですが、周りの人々に移さない、という心がけも感染症の予防には大切です。

2025年1月10日金曜日

太陽に再接近した探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」

アメリカ航空宇宙局(NASA)が2018年に打ち上げた太陽探査機 Parker Solar Probe(パーカー・ソーラー・プローブ)が、2024年 12月 24日に、太陽表面からおよそ 610万 km という、これまでで最も太陽に接近したことが明らかになりました(NASAのパーカー探査機のウェブサイトはこちら)。パーカー探査機は地球付近と太陽周辺を結ぶ楕円軌道を描きながら、太陽を観測しており、これまでも太陽に最接近した記録をつくってきましたが、その記録が更新されました。「パーカー」は、太陽物理学者であったユージン・ニューマン・パーカーを称えて名付けられたものです。

太陽は地球から最も近いところにある恒星ですが、まだ物理学的にわかっていないことも多くあります。例えば、
  • 太陽表面(およそ 6, 000 ℃)よりも高い温度をもつ太陽コロナ(およそ 100万 ℃ 以上)を加熱したり、極めて高温のプラズマ(電荷を帯びた気体)である太陽風を加速したりするエネルギーがどのように流れているか
  • 太陽風が流れ出している部分で、磁場がどのような構造をしているのか
などを明らかにすることが、パーカー探査機の目標です。

太陽表面からの距離が 610万 km といわれてもねぇ…   という声が聞こえてきそうですが、太陽と水星の距離は 5, 800万 km で、太陽に最も近い惑星よりもさらに太陽に近いところに到達したことがわかります。

太陽に再接近したときの温度は、およそ 980 ℃になったと予測されていますが、パーカー探査機の設計上は、さらに高い温度でも問題が生じないとのことです。パーカー探査機は耐熱のために炭素素材でできたシールドをもっていますが、接近につれて色がより白くなったことが確認されています。白くなれば、それだけ太陽からのエネルギーを反射できるのです。

太陽への再接近後も、観測のための計測機器に異常は確認されておらず、正常に稼動しています。今から数週間後には地球近辺まで到達し、再び太陽へ接近していきます。

パーカー探査機は太陽に最も接近した人工物体になりましたが、同時に人類がつくり出した最も高速で移動する物体にもなり、時速 69万 km で移動したことが確認されました。太陽周辺という過酷な環境の観測活動では、さまざまな記録が生み出されているようです。

2025年1月9日木曜日

「手作りバター」はいかがですか?

先日、ある会合で「科学実験」の実演依頼がありました。飲食を伴う会場で化学薬品を使うことは少々気がひけるので、「手作りバター」をつくる実験を計画しました。みなさんは体験したことがあるでしょうか?

バターは牛乳の成分のうち、乳脂肪分を固めたものです。生クリームは乳脂肪分を濃縮しているので、簡単にバターを作ることができます。生クリームに含まれている乳脂肪を、振ることによって衝突・合体させて、どんどん集めれば、やがてバターができる(まるで太陽系の形成過程の一部?)のです。

用意するものは
  • 生クリーム
  • ペットボトル
  • 衛生的なガーゼ
  • はさみ
だけ。作ったバターをそのまま味見するのはなかなかきついでしょうから、味の薄いパンがあればなおよいでしょう。塩がかかっていないクラッカーにバターをつけて食べることも、予備実験で行ってみましたが、クラッカーの味そのものがかなり強く、バターを味わうには難しいようです。

生クリームは原材料に「牛乳」あるいは「生乳」と示されたものでなければなりません。植物性クリームからはバターはできませんので、ご注意ください。

今回は、500 mLの水を購入して、ペットボトルを使いました(衛生面から、飲み終わったものを使うのは控えたほうがよさそうです。水は氷を入れた容器に移します)。このペットボトルに、生クリームを 100 mL 入れます。しっかりふたをして、あとはペットボトルを振るだけです。ときどき、氷水にいれて冷やしましょう。

振っていると、やがて音がしなくなります。これは、生クリームがホイップクリームに変わった合図です。ふたを開けて、中を覗いてみましょう。きれいなホイップクリームになっていることがわかります。透明なペットボトルを使っていれば、内側全体がクリームで覆われている状態です。

さらに振り続けます。ここからはちょっと時間がかかるかもしれませんが、根気よく振り続けます。すると、突然、「バシャバシャ」という音に変わります。透明なペットボトルでは、固形分と液体に分かれていることを確認できるはずです。この固形分がバターです。ここまできたら、ペットボトルを切り、中身をガーゼで濾して、ガーゼに残った固形分を取り出します。

濾過した液体は、乳清(ホエイ)です。ヨーグルトに上澄みができることがありますが、それと同じもので、栄養分が含まれています。ホットケーキに混ぜるとふわっと仕上がるそうです。

このようにしてできたバターは、いわゆる「塩分不使用バター」です。日本人は日常的に塩分を摂りすぎという統計がありますので、このままパンなどにつけて味わってみてください。会合では、できあがったバターの半分に、ココアパウダーとグラニュー糖を混ぜたものも作りました。しっかり味がついて、お子さんには喜ばれるかもしれません。

一般に生クリームは商品名のあとに、「35」「42」「47」などの数字が示されています(メーカーによってこれらの数字は違います)。これは、乳脂肪の比率です。数字が大きいものを使えば、それだけバターも多くできます。夏休みの自由研究などで、乳脂肪分とバターの収量を確認してみるのも面白いかもしれません。

今年は「巳年」なので、パンの上にバターをヘビの形にできないかな〜と、予備実験でバターを注射器に入れて出そうとしました。しかし、バターは相当固いので、注射器で形成することはできませんでした。絞り袋に入れても、やはり無理。予備実験って、やはり大切なのですね…

2025年1月8日水曜日

白身の魚? それとも赤身の魚?

昨日はアスタキサンチンについての記事を配信しました。アスタキサンチンの話題をもう一つ、提供しましょう。

鮭(サケ)の身(筋肉)には赤い色がついていますが、じつは白身の魚です。その身が赤いのは、エビと同じくアスタキサンチンによるものです。エビもサケも、自分でアスタキサンチンを作り出すことはできず、食べ物から取り入れます。では、アスタキサンチンはもともとどんな生き物に存在していたのでしょう?

藻類に「ヘマトコッカス」とよばれる種類があり、この種の藻類は通常の環境ではアスタキサンチンをもちません。強い太陽光や高い温度などのストレスを受ける環境にさらされると、ヘマトコッカスはアスタキサンチンを作り出します。アスタキサンチンは活性酸素から細胞のダメージを防ぐと説明しましたが、このはたらきによってストレス環境下でもヘマトコッカスは生き延びることができるのです。

ヘマトコッカスは動物プランクトンの餌となり、さらにこのような動物プランクトンをエビやサケが食べることで、アスタキサンチンが体内に蓄積されていきます。つまり、食物連鎖によってエビやサケにたどり着くのです。この事例のように、環境に存在する物質の濃度よりも高い濃度で、生物の体内に物質が存在することを「生物濃縮」といいます。

天然のサケは、自然環境に存在するアスタキサンチンを取り入れた結果、身が赤くなりますが、養殖されているサケはそのままでは白身の魚に育ちます。かつて『ジェーン・グドールの健やかな食卓』(日経BP社 2011年)を共訳で出版したことがあります。ジェーン・グドールはチンパンジーの生態について研究する動物行動学者です。この書籍は、自然環境に配慮した食生活がいかに重要であるかを述べたもので、その中にサケの養殖についての記述があったことを思い出します。養殖されているサケの餌には、ピンク色の染料が混ぜられているそうです。論文(参考1)を調べてみると、サケの養殖では、餌にアスタキサンチンおよびカンタキサンチンを混ぜているようです(添加量は農林水産省令によって上限が決められています)。カンタキサンチンもアスタキサンチンと同様のカルテノイド色素です。

天然の環境と養殖の環境とでは、さまざまな違いがあります。「白身のサケ」では市場価値が下がるということから、わざわざ餌にアスタキサンチンなどの色素を混ぜて育てている、というわけです。もし、私たちが「白身のサケ」でも同じように購入するのであれば、わざわざ色素を混ぜる必要はない、ということなのでしょうが…


(参考1)K. Suzuki, et al.「養殖サケ・マス類中のカロテノイド系色素及び酸化防止剤の分析」Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst.P.H., 57, 219, 2006

2025年1月7日火曜日

アスタキサンチンと活性酸素

今月5日(日)の NHKラジオ「子ども科学電話相談」で、「エビはどうして炒めると赤くなるの?」という、小学1年生の男の子の質問が取り上げられました。お母さんの料理のお手伝いをしていたとき、エビの色が変わったことに気がついたそうです。

エビなどの甲殻類は、アスタキサンチンと呼ばれる赤い色素をもっています。同時に、クラスタシアニンというタンパク質ももっています。エビに熱が加えられる前は、クラスタシアニンがアスタキサンチンと結びついていて、赤い色にはなりません。ところがエビを炒めたり、茹でたり、焼いたりするとタンパク質のクラスタシアニンが壊れてしまいます。タンパク質は熱に弱いのです。その結果、アスタキサンチンとの結びつきがほどけて、赤い色が現れてくるというわけです。

アスタキサンチンという物質、とくに女性の方々は「どこかで聞いたことがあるような…」と思っているかもしれません。この物質は、強い抗酸化作用をもつことが知られており、物質が酸化することを強力に妨げます。このことから、皮膚で生じた活性酸素を除去することを期待して化粧品に配合しているものが販売されています。

活性酸素は「ほかの物質を酸化させるはたらきが非常に強力な酸素」のことで、私たちが呼吸で取り込んだ酸素のうち、およそ2%が活性酸素になると考えられています。活性酸素はその強力な酸化作用のため、私たちの体の中で細菌やウイルスを死滅させるという役割を担っています。ところが、活性酸素が増えすぎると、細胞にダメージを与え、老化やメタボリックシンドロームなど、いろいろな疾病の原因となることも知られており、人体がどのようなしくみで活性酸素量を認識・調整しているかについて研究が行われています(参考1)。

このように、一つの物質のもつ「強力な酸化作用」が、私たちの体の中では免疫のしくみを担っていたり、一方では細胞にダメージを与えてしまうという「両刃の剣」になっているというのはよくあることで、活性酸素に限りません。なにごとにもバランスが大切、ということでしょうか。




2025年1月6日月曜日

においをだれもが同じに感じるか?

においは物質に特有な性質です。においを感じるためには、「においのもと」の物質が、私たちの鼻の奥にある「嗅細胞」に触れなければなりません。嗅細胞が「においのもと」によって刺激を受けると、つながっている神経細胞を通じて刺激が脳に送られ、「においがする!」と感じることができます。

「においのもと」である物質は、空気中を移動して嗅細胞にたどり着かなければならないので、そのような物質は揮発性物質でなければなりません。揮発性物質とは、日常的な温度で液体あるいは固体から気体になりやすい物質のことです。一般に揮発性物質は温度が高くなると、より揮発しやすくなります。ホットコーヒーからは香りが立ち昇ってきますが、アイスコーヒーからはそれほど香りを感じないのは、このような理由です。

だれもが同じにおいを感じているわけではありません。たとえば、ヒトをはじめとする動物に有害なシアン化水素は、特徴的な「アーモンド臭」がすると言われます。みなさんが食べ物としてよく知っているアーモンドの香ばしいにおいではなく、収穫前の甘酸っぱいようなにおいですが、60%ほどの人はこのアーモンド臭を認識できます。残りの40%の人は、アーモンド臭を認識できないことが知られています。これは遺伝的に認識できないためです。このように、においの感じかたには遺伝的な個人差などがあり、さらにそのにおいをよいにおいと感じるか、あるいはそうでないかには個人の経験にも左右されます。

就寝前のひとときなどに、自分のリラックスできるにおいを感じる環境を用意できれば、安眠できるかもしれません。

この話題に関係のある NHKラジオ「子ども科学電話相談」の質問と回答のやりとりを「読む」ことのできる NHK「読むらじる」が、以下の URL から公開されています。ぜひご覧ください。



2025年1月5日日曜日

ほこりはどこから出てくるのか?

読者のみなさまからいただいた質問に、「埃(ほこり)はどこからでてくるのか?」というものがありました。いつも掃除をしているはずなのに、どこからともなく出現する埃。喘息やアレルギー疾患のある方は、埃には気をつけて生活されていることと思います。

さて、埃をよく見ると、ふわふわしたものでできているように見えるはずです。このふわふわしたものは、細い「繊維クズ」からできています。私たちが生活する中で、衣服を着ていますが、この衣服からはどうしても繊維クズが生じます。布地が折れ曲がったり、擦れたりしただけで少しずつ繊維が切れていきます。その証拠に、長く着用した衣服は薄くなっていきます。

この繊維クズはとても小さく軽いので、部屋の中の空気の流れに乗って、空気が溜まりやすいところに集まってきます。部屋の中で、埃は部屋の真ん中には現れません。部屋の隅や、物陰にできます。そのようなところは空気が溜まりやすいということです。さらに、繊維クズが絡まってもらわないと、ふわふわにはなりません。

繊維クズを絡ませるのは、空気の渦です。激しい渦でなくても、部屋の中の空気は移動中に渦を巻き、その渦にのって繊維クズも一緒にコロコロと移動するのでしょう。

埃には繊維クズ以外にも、ティッシュペーパーの繊維や、ダニの死骸や排泄物、カビの胞子なども含まれます。これらが集まって、やがて立派な(?)「ふわふわした埃」になるのです。

このような埃の発生を防がなければならない半導体の製造工場などでは、「クリーンルーム」が設けられていて、繊維クズが発生しないような素材の服を着て、クリーンルームへの入室時に埃のもとが入り込まないように強力な空気を入室者に当てるなど、さまざまな工夫が凝らされます。

日常生活で埃の発生を防ぐことは難しいので、適切な間隔で掃除することが必要なのですね。


2025年1月4日土曜日

新刊『「なぜ・どうして」からはじめる物理学』(培風館)

2024年 11月に培風館から『「なぜ・どうして」からはじめる物理学』が発売されました。このページをパソコンでご覧いただいている方は、画面の右側にこの書籍の表紙をご覧いただけるはずです。

培風館は、2024年に創業 100周年を迎えた理工学専門の老舗出版社です。培風館のホームページにアクセスすると、『多変数の微積分』や『物性研究者のための場の量子論』、『宇宙流体力学』など、大学生〜専門家向けの書籍を主に発行していることがわかるでしょう。私たちも大学生だった頃から、培風館の書籍で勉強しておりました(私より一世代前のみなさんは、高校数学の参考書で馴染みがあるかもしれません)。

培風館から、文系の大学生を対象とした物理学の教科書を書いてみないか、と打診されたのは2019年のことでした。どんな内容がいいのかを考えながら過ごしていると、あっという間に時間が過ぎ、気がつけばコロナ禍に突入しておりました。コロナ禍になると大学の授業はオンラインとなり、街は人の行き来がなくなり、授業の内容もいくぶん変化しました。

そんな時期を過ぎてさらに数年、ようやく 2024年の出版に漕ぎ着けたという書籍です。

この書籍は、「大学の教科書」ということもあり、余白に十分な空白が設けられています。また、判型も大きめのB5版です。内容は文系の大学生に向けたもので、物理学に関心をもってもらえるようなものにしています。もちろん、大学生だけではなく、学生でない一般の方々にも「科学に触れてみたい」と感じたときに気軽に読むことができるような構成にしています。

世の中のとても多くの自然現象が「物理学」で説明されます。こう書くと、高校までの物理学の授業を思い出し、「公式がたくさん出てくるのでしょ」とか、「数式がいっぱい出てくるのでしょ」と感じる人がいらっしゃるでしょう。物理学は数学で記述されることによって、一般的な法則として扱うことができるようになるのですが、一方で数式は多くの読者にとって「受け入れがたい」ものであることも事実です。

そこで、この書籍では数式を使わずに、現象を説明するような書き方にしました。さらに、各章のタイトルは疑問で示すようにしました。文系の学生が疑問に感じることをそのまま示した形です。具体的な章の構成は、
  1. なぜ地震が起こるのか?
  2. なぜ天気は変わるのか?
  3. なぜ太陽は輝くのか?
  4. なぜ空と海は青いのか?
  5. 地球や月はどのように形成されたのか?
  6. 宇宙にはどのような天体が存在するのだろうか?
  7. 宇宙はどのような構造をしているのだろうか?
  8. どうして夜空は暗いのだろう?
  9. 宇宙はどうやって観測しているのだろうか?
  10. 宇宙で物質はどのように生じたのだろうか?
  11. 私たちの身の回りの物質は何に由来するのか?
  12. 極微の世界と日常の世界に違いはあるのだろうか?
  13. 宇宙はこれからどうなるのだろうか?
  14. 生命はどのように生まれたのか?
  15. 私たちはどのように生きていくべきか?
となっています。「あれ? 地学じゃないの?」と思うかもしれません。でも、自然科学には「これは物理」「これが地学」という境界はなく、一つの現象をいろいろな見方で考えた結果、より理解が深まるのです。地学と考えがちな領域も、「地球物理学」「宇宙物理学」など物理的な側面でいろいろな研究が行われています。

ぜひ、科学に関心をもちはじめた人に読んでいただきたいと願っています。


2025年1月3日金曜日

白パンはなぜ白い?

みなさま、あけましておめでとうございます。2025年がみなさまにとって素晴らしい一年になることをお祈り申し上げます。


さて、2024年 12月 30日に放送された、NHKラジオ「冬休み 子ども科学電話相談」。小学校2年生のお友だちから、「食パンはやわらかいのに、焼くとどうしてカリカリになるの?」という質問について、関連した質問がこのサイトに寄せられました。


【質問】────────────
「食パンを買ってくると、焼かれて外側が茶色に色づいています。切ってトースターで焼けば、白かったところが茶色になりますが、『白い食パン』とか『白パン』などの名前で販売されているパンは、焼いているはずなのに白いのはなぜ?」
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パンは焼くと色がつくもの。そう思っている人も多くいらっしゃるかもしれませんが、確かに「白パン」などは焼かれているはずなのに白いままです。パンや肉など、焼くと色がつくのは「メイラード反応」という化学反応によるものです。メイラード反応とは、糖とアミノ酸が反応して茶色の物質(メラノイジン)が生じる反応です。パンが焼けて茶色になったり、生肉が焼けて褐色に変化したりするのはこのためです。茶色の物質ができるだけでなく、香ばしい香りを生じる物質も作り出されます。

このメイラード反応は、180 ℃ほどになると急速に進みます。それより低い温度でも、進み方はゆっくりですが反応は起こります。その一例が、白パンです。白パンが工場で焼かれるとき、150〜160 ℃くらいの比較的低い温度で焼きます。そのため、急速なメイラード反応が起こらず、表面が白いままなのです。

フライパンの上のような高い温度でなく、低い温度でメイラード反応が起こっている例に、味噌があります。味噌は大豆や米が種原料ですが、これらに含まれる糖とアミノ酸でメイラード反応が起こり、時間の経過とともに色が濃くなっていきます。

ほかにも、刻んだ玉ねぎを弱火で炒めると飴色に変わるのも、メイラード反応によるものです(ただし、焦げてさらに色が濃くなってしまった状態は、炭化です)。

なお、メイラード反応の「メイラード」とは、この反応メカニズムを明らかにしたフランスの化学者、ルイ=カミーユ・マヤール(マヤールは英語読みだとメイヤードになり、日本語では「メイラード」になったようです)に因みます。


2024年11月3日日曜日

紫金山・アトラス彗星

 2024年 10月後半から、夕方の西の空に見えるようになった「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)」ですが、10月 20日(日)に望遠鏡で確認してからは天気に恵まれず、観測できませんでした。

11月 3日(日)は久々に東京地方も晴れ渡り、望遠鏡を持ち出して観測しました。先月の夜よりは気温も下がり、しっかりと着込まなければいけません。

双眼鏡を使って探してみましたが、残念ながら私にはわかりませんでした…   でも、望遠鏡では確認できました(というより、探してくれた?)!

紫金山・アトラス彗星(Seestar S50 で撮影)

先月よりも暗くはなっていますが、まだ尾が伸びている様子を確認できます。3日は日没後、月が出ていなかったので、より観測しやすかったのかもしれません。この彗星は双曲線軌道を描くと計算されているので、この後は太陽系から飛び出していくことになりそうです。

11月上旬の朝方の東の空に観測される(かも)と予想されていた、「アトラス彗星(C/2024 S1)」は、太陽に接近している最中に、コマの部分が崩壊してしまった可能性が高いようです。ただ、コマが崩壊しても尾の部分だけが残って輝く場合もあるとか。ニュースで話題になるかもしれません。

2023年11月13日月曜日

「きりばこ」?

 11月12日(日)のNHKラジオ「子ども科学電話相談」で、素粒子に関係する質問の中で、電話の向こうのおともだちから「きりばこ」の話題が出ました。番組では「きりばこ」について詳しく説明しませんでしたが、私の周辺の大きなおともだちから、「『きりばこ』って、なに? 「桐の箱」かと想像してしまった…」と話題になりました。

スタジオで回答していたときにはまったく気がつきませんでしたが、「きりばこ」という音を漢字に変換すると、多くの人が「桐箱」を連想しますね。

話題にされていたのは「霧箱」です。放射線の存在を目で見ることができるように工夫された実験装置です。箱の中で気体のアルコールが過飽和状態になっています。過飽和状態というのは、いまにも液体に変わってしまう状態になった気体だと考えましょう。ちょっとした刺激を受けると、気体はすぐに集まって小さな液体の粒になってしまいます。

放射線には「電離作用」があります。物質を電気を帯びたイオンの状態にしてしまうのです。そのため、霧箱の中を放射線が通過すると、通り道にそって発生したイオンが刺激となって小さな液体の粒になります。この液体の粒がたくさん集まって「白い線」になって見えるのです。

科学館などで見ることができますが、石川県が提供している霧箱の動画がありますので、ご覧ください。


私たちは常に放射線を浴びています。これらの放射線は、宇宙空間からやってきたもの(これを宇宙線といいます)だったり、地下からやってきます。私たちが食べているいろいろなものからも放射線は放出されています。これらのものを「自然放射線」と呼びます。

科学館などに設置されている霧箱は、そのような自然放射線を目に見える形にしているのです。