2023年9月10日日曜日

有機物と無機物

 9月10日(日)のNHKラジオ「子ども科学電話相談」では、なかなか難しい質問が飛び出しました。小学2年生のおともだちが、「有機物と無機物について考えていたら、化石が有機物なのか無機物なのか疑問に感じた」と質問したのでした。

小学2年生で無機物・有機物が気になるところなど、将来が有望なおともだちです。

無機物と有機物は「炭素があるかないか」だと考えている人も多いかもしれませんが、じつはそうではありません。無機物・有機物と生き物とは関係ありますが、生きているから有機物、生きていないから無機物というわけでもありません。

19世紀の中頃、「地球にもともとあるものと、実験室でつくることができるものを無機物、生物によってつくられるものを有機物」とグループ分けをしようとの提案がなされました。ところが、科学の発展により、これではまずい状況が生まれてしまいました。尿素(CO(NH2)2)を実験室で合成することができるようになったのです。その後、当時「生物にしかつくり出せないもの」と考えられていた物質が次々と実験室で合成されるようになり、無機物・有機物の定義を変えなければならなくなりました。

有機物は「物質の基本骨格に炭素をもつもの」、そして無機物は「有機物でないもの」というようになりました。炭素を含んでいても「基本骨格に炭素をもっていない」からと説明できます。たとえば、メタン(CH4)や二酸化炭素(CO2)は炭素を含みますが、有機物とはしません。ただ、現代では「有機物と無機物の明確な区別はない」とも言われているようです。

さて、化石は無機物・有機物のどちらでしょうか。化石とは「人類が出現する前の時代の、生物の遺骸や痕跡」を化石と言います。生物が生きている間、もちろんそのからだは有機物でできていますが、自然界で死んでしまうと微生物によってどんどん分解されていきます。このとき、とても珍しいことではありますが、条件が揃えば化石になって地層の中に保存されます。

化石は堆積岩中で発見されますが、生物の遺骸が湖や海の底に沈み、圧力を受けながら時間が経過して化石ができる(これらのほとんどは分解されてしまうので私たちの目には触れない)、というわけです。骨の中の成分が周りの土などの鉱物と置き換わっていくことで硬くなり、やがて化石になるのです。このときは炭素を含んだ成分は鉱物に置き換わっているので、無機物といえるでしょう。

しかし、とくに条件がよければ、古代生物の骨の化石に、爪の成分の「ケラチン」や皮膚をつくる「コラーゲン」がそのまま残されていることがあります。このようなものを研究して、古代生物の皮膚の様子などが明らかになっています。繰り返しになりますが、このようなタンパク質が残っているのは非常に稀なケースです。

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