2025年1月24日金曜日

時期はずれのクリスマスツリー

昨年のクリスマスは、楽しく過ごされましたか? まだまだ先のことですが、今年のクリスマスも、楽しいことがあるといいですね。

1月になっておりますが、夜空にはまだクリスマスツリーが輝いています。23日の夜に、天体写真を撮ってみました(星雲フィルターを使用し、画像編集ソフトで赤を強調しています)。



この写真に収められている星々の集まりは、「クリスマスツリー星団」(NGC 2264)と名付けられています。「どこがクリスマスツリー?」と聞こえてきそうです… こんなふうに手描きで線を入れれば、それなりに見えるでしょうか? 


青い星々が、クリスマスツリーのオーナメントとなって、ツリーに巻きついているかのように見えませんか? この星団は、地球から 2,500光年離れたところにあり、誕生してから 100万〜500万年しかたっていない若い星が 100個ほど集まっているものです。青い星は若い星で、表面の温度が非常に高くなっていることを示しています。

この星団は、いっかくじゅう座にあり、オリオン座の近くです。位置を確認してみましょう。

いっかくじゅう座付近の星図(©︎Wikimedia Commons)

いっかくじゅう座の領域のかなり上のほうに、NGC 2264 があります。この時期はオリオン座がとても見やすくなっています。風邪などを引かないように、しっかり着込んで(北海道弁では「まかなって」)夜空を眺めてみてはいかがですか?


2025年1月14日火曜日

低温やけど

寒い日が続いています。こんなときに「湯たんぽ」を使いたくなります。インターネットで検索したところ、ペットボトル(温めて販売されていたお茶など)に 50〜60 ℃ のお湯を八分目ほどまで入れ、しっかりふたをして、寝る 10 分ほど前に布団に入れておくという方法が紹介されていました。

「低温やけど」を防ぐため、布団に入るときはペットボトルは取り出します。ところで、低温やけどとふつうのやけどとは、なにが違うのでしょう?

火にかけていた鍋を触れてしまったり、熱湯がかかったりして起こる「高温やけど」とは違い、低温やけどは 44〜50 ℃ くらいの温度のものが皮膚に長時間触れていることで、組織に損傷が生じたものです。条件によっては数分でも低温やけどを起こすことがあります。

見た目はひどくなくても、皮膚の深いところの組織が損傷を受けていることがあり、低温やけどの可能性があるときには医療機関の受診が必要です。初期の症状は
  • 皮膚が赤くなる
  • ヒリヒリした感じがする
というものですが、皮膚の深いところが損傷を受けていると、1週間ほど(あるいはそれ以上)になってから
  • 皮膚の感覚がなくなる
  • 皮膚が黒ずんでくる
などの症状になることがあります。低温やけどのやっかいな点は、表面から見ただけでは皮膚の深いところが損傷を受けているかどうかを判断できない、ということです。
  • 湯たんぽは寝るときには布団から取り出す
  • 電気毛布は寝るときにはスイッチを切る
  • 使い捨てカイロは直接皮膚に当てずに服の上から使う
など、低温やけどにならないように気をつけて、快適な冬を過ごしましょう。「低温やけどになったかな?」と思ったら、速やかに医療機関を受診しましょう。

2025年1月13日月曜日

2024年の夏は暑かった… それだけではなく…

2024年の夏、みなさんはどんな夏だったと記憶していますか? ここ数年は毎年暑く、私などはいつの年が暑かったかの比較ができないほどですが…

欧州連合(EU)の気象情報機関であるコペルニクス気候変動サービスは、2024年の平均気温が工業化以前(1850〜1900年)の平均気温と比較して、1.6 ℃ 高かったと発表しました。

また、アメリカ航空宇宙局(NASA)の発表でも、2024年の年間平均気温が1880年の観測開始以降で最も暑かったことがわかりました。NASAのデータによれば、工業化以前(1850〜1900年)の平均気温との比較では 1.47 ℃ 高かった、と報告されています。

この記録は2年連続で更新されました。「1.5 ℃」の基準は、2015年のパリ協定で採択されたもので、パリ協定は「地球の平均気温の上昇を工業化以前の平均気温に比べて 1.5 ℃ 未満に抑えるための取り組みを進めよう」と国際間で取り決められたものです。

単年度で 1.5 ℃ を越えたからといって人類が今にも滅亡してしまう、というようなことではありません。しかし、 1.5 ℃ を上回る平均気温が長期的に続いてしまえば、気候変動の影響はより深刻になるであろうという研究報告書はいくらでもあります。パリ協定で 1.5 ℃ という基準が採択されたのは、人為起源の変化があるレベルを超えると、気候システムにしばしば不可逆性を伴うような大規模な変化が生じる可能性があると考えられ、これは産業革命前と比べて、 1 ℃ から 2 ℃ の間の気温上昇で生じると考えられたためです。このような「後戻りできなくなる段階」を「ティッピング・ポイント」といいます。今、私たちは確実にティッピング・ポイントに向かっているのです。

NASAゴダート宇宙研究所の Gavin Schmidt 氏によると、今から 300万年前(鮮新世)の温暖だった時代の平均気温は、産業革命前より 3 ℃ 高かったに過ぎない、とのことです。この時代の海面は、現在に比べておよそ 25 m 高かったと考えられています。Schmidt 氏は、最近の150 年間で、鮮新世の暖かさの半分にまで到達しているのだ、と言います。地球の非常に長い歴史の中で成し得た気温変化を、人類による工業化はあっという間に実現してしまったことになります。

地球温暖化に対しては、いろいろな考え方があります。気温の変化は、今、なにかを行ったからといって、すぐに成果の出るものではありません。目先のことだけを考えていればいいような状況とは本質的に異なるのだ、ということを理解しなければならない問題です。



上の動画は、NASA’s Scientific Visualization Studio に収録されています。1880年1月からの月別の地球の平均気温が、1951〜1980年の月別平均気温に比べて、どれほどの差があったかを視覚的に示したものです。

私たちが「過ごしやすい日本の夏」を取り戻すことはできるでしょうか?


2025年1月12日日曜日

インフルエンザが流行中です…

ニュースで繰り返し流れているとおり、インフルエンザが流行しています。現在の方法で統計を取り始めた 1999年以降、最大の患者数になったとか。インフルエンザだけでなく、新型コロナウイルスや、いわゆる風邪に罹ってしまう人も多いようです。

インフルエンザは典型的には、38 ℃ 以上の発熱や悪寒、関節痛、それに全身のだるさなどの全身症状と、喉の痛みや咳などの風邪に似た症状が現れます(すべての症状がでるとは限りません)。インフルエンザワクチンを接種した人は、感染しても上記のような激しい症状にはならないようですが、それでもつらいことに変わりはありません。

新型コロナウイルスが大流行した 2020〜2021年には、インフルエンザは流行しませんでした。これは、人の接触が減ったことと、多くの人が感染症の対策を心がけたことが原因と考えられています。思い出してみましょう。きっとみなさんも、よく手を洗ったり、除菌シートなどを使っていたはずです。今よりもマスクもつけていた人が多かったのではないでしょうか。

インフルエンザや新型コロナウイルスのような呼吸器の感染症は、主に鼻や口からウイルスが入ってきます。食事の前に手を洗えば、口に入ってくるウイルスの数を減らすことができます。また、ヒトはよく顔を触る生き物です。ついつい、鼻や口元を触っていませんか。手指にウイルスが付着していると、顔を触ることで鼻や口にウイルスが入りやすくなります。

一般的なマスクは直接的にウイルスの侵入を防ぐことはできません。マスクの繊維の隙間は、ウイルスにとっては「スカスカ」です。しかし、感染している人がウイルスの含まれている飛沫を飛ばしてしまうことを防ぐには有効です。感染症は潜伏期間がありますから、その間に他人に広めてしまうことを防ぐという意味で、マスクは有効なのです。

さらにマスクには、鼻や喉の乾燥を防ぐ効果も期待できます。この季節は空気が非常に乾燥しています。鼻や喉の粘膜が乾燥すると、ウイルスや細菌に対する防御力が落ちてしまうので、マスクで乾燥を防ぐことは感染予防に有効です。少しずつ、こまめに水分を摂ることも重要です。

これから受験シーズンになり、感染症により一層、気をつけなければならない人もいることでしょう。自分が感染しないことはとても大切なことですが、周りの人々に移さない、という心がけも感染症の予防には大切です。

2025年1月10日金曜日

太陽に再接近した探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」

アメリカ航空宇宙局(NASA)が2018年に打ち上げた太陽探査機 Parker Solar Probe(パーカー・ソーラー・プローブ)が、2024年 12月 24日に、太陽表面からおよそ 610万 km という、これまでで最も太陽に接近したことが明らかになりました(NASAのパーカー探査機のウェブサイトはこちら)。パーカー探査機は地球付近と太陽周辺を結ぶ楕円軌道を描きながら、太陽を観測しており、これまでも太陽に最接近した記録をつくってきましたが、その記録が更新されました。「パーカー」は、太陽物理学者であったユージン・ニューマン・パーカーを称えて名付けられたものです。

太陽は地球から最も近いところにある恒星ですが、まだ物理学的にわかっていないことも多くあります。例えば、
  • 太陽表面(およそ 6, 000 ℃)よりも高い温度をもつ太陽コロナ(およそ 100万 ℃ 以上)を加熱したり、極めて高温のプラズマ(電荷を帯びた気体)である太陽風を加速したりするエネルギーがどのように流れているか
  • 太陽風が流れ出している部分で、磁場がどのような構造をしているのか
などを明らかにすることが、パーカー探査機の目標です。

太陽表面からの距離が 610万 km といわれてもねぇ…   という声が聞こえてきそうですが、太陽と水星の距離は 5, 800万 km で、太陽に最も近い惑星よりもさらに太陽に近いところに到達したことがわかります。

太陽に再接近したときの温度は、およそ 980 ℃になったと予測されていますが、パーカー探査機の設計上は、さらに高い温度でも問題が生じないとのことです。パーカー探査機は耐熱のために炭素素材でできたシールドをもっていますが、接近につれて色がより白くなったことが確認されています。白くなれば、それだけ太陽からのエネルギーを反射できるのです。

太陽への再接近後も、観測のための計測機器に異常は確認されておらず、正常に稼動しています。今から数週間後には地球近辺まで到達し、再び太陽へ接近していきます。

パーカー探査機は太陽に最も接近した人工物体になりましたが、同時に人類がつくり出した最も高速で移動する物体にもなり、時速 69万 km で移動したことが確認されました。太陽周辺という過酷な環境の観測活動では、さまざまな記録が生み出されているようです。