2025年1月7日火曜日

アスタキサンチンと活性酸素

今月5日(日)の NHKラジオ「子ども科学電話相談」で、「エビはどうして炒めると赤くなるの?」という、小学1年生の男の子の質問が取り上げられました。お母さんの料理のお手伝いをしていたとき、エビの色が変わったことに気がついたそうです。

エビなどの甲殻類は、アスタキサンチンと呼ばれる赤い色素をもっています。同時に、クラスタシアニンというタンパク質ももっています。エビに熱が加えられる前は、クラスタシアニンがアスタキサンチンと結びついていて、赤い色にはなりません。ところがエビを炒めたり、茹でたり、焼いたりするとタンパク質のクラスタシアニンが壊れてしまいます。タンパク質は熱に弱いのです。その結果、アスタキサンチンとの結びつきがほどけて、赤い色が現れてくるというわけです。

アスタキサンチンという物質、とくに女性の方々は「どこかで聞いたことがあるような…」と思っているかもしれません。この物質は、強い抗酸化作用をもつことが知られており、物質が酸化することを強力に妨げます。このことから、皮膚で生じた活性酸素を除去することを期待して化粧品に配合しているものが販売されています。

活性酸素は「ほかの物質を酸化させるはたらきが非常に強力な酸素」のことで、私たちが呼吸で取り込んだ酸素のうち、およそ2%が活性酸素になると考えられています。活性酸素はその強力な酸化作用のため、私たちの体の中で細菌やウイルスを死滅させるという役割を担っています。ところが、活性酸素が増えすぎると、細胞にダメージを与え、老化やメタボリックシンドロームなど、いろいろな疾病の原因となることも知られており、人体がどのようなしくみで活性酸素量を認識・調整しているかについて研究が行われています(参考1)。

このように、一つの物質のもつ「強力な酸化作用」が、私たちの体の中では免疫のしくみを担っていたり、一方では細胞にダメージを与えてしまうという「両刃の剣」になっているというのはよくあることで、活性酸素に限りません。なにごとにもバランスが大切、ということでしょうか。




2 件のコメント:

  1. 初めてコメントさせていただきます。アスタキサンチンと活性酸素(ペルオキシナイトライト)の研究について、私も大昔に触れたことがあります。同じ赤色で言ったらトマトに含まれるリコピンの抗酸化作用についても触れる機会がありました。その時に、何事についても100%良い、悪いと決めるのは難しいと感じました。昔を思い出して長々と書いてしまいましたが、小さいお子さんが化学に興味を持っていると思うと嬉しくなりました。また、何かの際にはコメントさせていただきます。

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  2. コメントをありがとうございます。いろいろなことから、多くの人がサイエンスに関心をもってもらえるようになればいいな、とサイトを運営しております。
    次回以降もぜひ、コメントをお寄せください。

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