2024年 11月に培風館から『「なぜ・どうして」からはじめる物理学』が発売されました。このページをパソコンでご覧いただいている方は、画面の右側にこの書籍の表紙をご覧いただけるはずです。
培風館は、2024年に創業 100周年を迎えた理工学専門の老舗出版社です。培風館のホームページにアクセスすると、『多変数の微積分』や『物性研究者のための場の量子論』、『宇宙流体力学』など、大学生〜専門家向けの書籍を主に発行していることがわかるでしょう。私たちも大学生だった頃から、培風館の書籍で勉強しておりました(私より一世代前のみなさんは、高校数学の参考書で馴染みがあるかもしれません)。
培風館から、文系の大学生を対象とした物理学の教科書を書いてみないか、と打診されたのは2019年のことでした。どんな内容がいいのかを考えながら過ごしていると、あっという間に時間が過ぎ、気がつけばコロナ禍に突入しておりました。コロナ禍になると大学の授業はオンラインとなり、街は人の行き来がなくなり、授業の内容もいくぶん変化しました。
そんな時期を過ぎてさらに数年、ようやく 2024年の出版に漕ぎ着けたという書籍です。
この書籍は、「大学の教科書」ということもあり、余白に十分な空白が設けられています。また、判型も大きめのB5版です。内容は文系の大学生に向けたもので、物理学に関心をもってもらえるようなものにしています。もちろん、大学生だけではなく、学生でない一般の方々にも「科学に触れてみたい」と感じたときに気軽に読むことができるような構成にしています。
世の中のとても多くの自然現象が「物理学」で説明されます。こう書くと、高校までの物理学の授業を思い出し、「公式がたくさん出てくるのでしょ」とか、「数式がいっぱい出てくるのでしょ」と感じる人がいらっしゃるでしょう。物理学は数学で記述されることによって、一般的な法則として扱うことができるようになるのですが、一方で数式は多くの読者にとって「受け入れがたい」ものであることも事実です。
そこで、この書籍では数式を使わずに、現象を説明するような書き方にしました。さらに、各章のタイトルは疑問で示すようにしました。文系の学生が疑問に感じることをそのまま示した形です。具体的な章の構成は、
- なぜ地震が起こるのか?
- なぜ天気は変わるのか?
- なぜ太陽は輝くのか?
- なぜ空と海は青いのか?
- 地球や月はどのように形成されたのか?
- 宇宙にはどのような天体が存在するのだろうか?
- 宇宙はどのような構造をしているのだろうか?
- どうして夜空は暗いのだろう?
- 宇宙はどうやって観測しているのだろうか?
- 宇宙で物質はどのように生じたのだろうか?
- 私たちの身の回りの物質は何に由来するのか?
- 極微の世界と日常の世界に違いはあるのだろうか?
- 宇宙はこれからどうなるのだろうか?
- 生命はどのように生まれたのか?
- 私たちはどのように生きていくべきか?
となっています。「あれ? 地学じゃないの?」と思うかもしれません。でも、自然科学には「これは物理」「これが地学」という境界はなく、一つの現象をいろいろな見方で考えた結果、より理解が深まるのです。地学と考えがちな領域も、「地球物理学」「宇宙物理学」など物理的な側面でいろいろな研究が行われています。
ぜひ、科学に関心をもちはじめた人に読んでいただきたいと願っています。
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