2018年4月22日日曜日

太陽黒点

東京は急に暑くなりました。今週中頃の雨のあと、今度は涼しくなっていくとのことですが、こんなジェットコースターのような気温の上下に、身体がとてもついていきません… 暑くなると、まるで太陽が近くなったのではないかというような錯覚を覚えます(私だけ?)が、太陽について紹介しましょう。

太陽には「しみ」のように見える黒い点があります。これを黒点と呼んでいます。実際の太陽を観測した画像を見てみましょう。

(C) NASA


この画像にも、太陽の中心部に黒点が見えています。この黒点の温度は約 4,000 ℃。その周囲の太陽表面の温度は、約 5,800 ℃。黒点は温度が低いのです。黒点がその名のとおりに黒く見える理由は、そこにあります。

物体は、その温度によって光を放ちます。光にはいろいろな種類があり、電波・マイクロ波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・γ線などです。5,800 ℃ という温度は、ちょうど可視光線をもっとも強く放出する温度です。それに対して、4,000 ℃ は赤外線を強く放射する温度で、可視光線は弱くなります。私たちが見ることのできる光は、可視光線のみですから、温度の低い黒点の部分は周りに比べて光っていないように見える、つまり黒っぽく見える、というわけです。

ではなぜ、黒点は温度が低いのでしょうか。それは、太陽表面の強力な磁場が、太陽内部から浮き上がってくるガスの流れを妨げ、温度の上昇を防いでいるためです。太陽の表面の下には、「対流層」と呼ばれる部分があります。対流層は、太陽中心部からの熱をガスとともに効果的に太陽表面へと運びます。太陽の表面に強い磁場を生じる部分ができると、磁気のはたらきでガスの流れを妨げるわけです。

2018年4月21日土曜日

パスワードを使い回していませんか?

電子メールやスマートフォン、パソコンへのログインのときに必要なものが、パスワード。みなさんのお使いのパスワードは、安全でしょうか。

米国のセキュリティー・コンサルティング企業の TeamsID が、毎年 “Worst Password” を発表しています。「こんなパスワードは、すぐに破られますよ」という警告です。どんなパスワードがランク・インしているかというと、
  1.  123456
  2.  password
  3.  12345
  4.  12345678
  5.  football
  6.  qwerty
  7.  1234567890
  8.  1234567
  9.  princess
  10.  1234
というランキングになっています。ちなみにランキング1位と2位は前年度と同じ。不動の地位(⁉︎)を占めています。第6位の “qwerty” は、日本語としてはいかにもパスワードに感じられますが、キーボードの左上のキー並びですね。

最近のシステムでパスワードを設定するとき、
  • アルファベットの大文字と小文字を含むこと
  • さらに数字も含むこと
というようなルールになっているものもありますね。単にアルファベットの小文字だけであれば26文字ですが、大文字を含めると52文字、さらに数字を含めると62文字となり、これらの文字の組み合わせは膨大な数となりますので、第三者から推測されにくくなります。

パスワードを長くすればするほど、強固なものになりますが、その反面、当の本人が忘れてしまうという事例も起きやすくなります。さらに、かつては「パスワードは定期的に変えましょう」と内閣サイバーセキュリティセンターが呼びかけていたこともあり、多くのパスワードを変更しながら、何種類もの覚えられないパスワードに溺れてしまった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。忘れないためには書き留めておくことが一番ということで、パスワードのリストを書き出して、そのリストをどこかに置き忘れたりした方はいませんか?  そうすると、とても複雑なパスワードを1種類だけ確実に覚えて、そのパスワードを使い回してしまえ、というようなことになってはいませんか?

忘れることを防ぐため、利用者は複雑で忘れにくいパスワードをつくり、多くのシステムで使い回していることが実情のようです。これでは万一のときに複数のシステムへの侵入を許してしまうことになります。

定期的に変更するよりは、確実に覚えた複雑なパスワードを使った方がセキュリティーに対する効果は高い、ということで、2016年から内閣サイバーセキュリティセンターでは、パスワードの定期的な変更は必要ではなく、アルファベットと数字を組み合わせて10文字以上のパスワードをつくることを推奨しています。

みなさんのパスワードは大丈夫ですか?  どこかにメモしたりなどしないよう、ご注意ください。

2018年4月20日金曜日

恐竜絶滅の原因は・・・

昨日の恐竜の子孫の話題に引き続き、恐竜の絶滅の話題です。

今から2億2千万年前から6,550万年前の間、地球上には現在でいう「恐竜」が生きていましたが、6,550万年前に恐竜は絶滅してしまいました。じつは恐竜だけではなく、このとき地球上の70パーセントの動植物が絶滅したと考えられています。

このときの大絶滅の理由について、いくつかの学説がありました。
  • 巨大な隕石が地球に衝突して、環境が大きく変化してしまったから
  • 大規模な火山噴火があり、噴き出した噴煙で太陽光が遮られ、環境が変わったから
  • 伝染病が大流行した
などです。

2010年、この絶滅の理由を説明する、非常に有力な研究結果が発表されました。その理由とは、「ユカタン半島に地球外天体が衝突した」ことによるものです。ユカタン半島には、「チチュルブクレーター」と名付けられた、巨大なクレーター(直径180キロメートル)があります。 このクレーターを作り上げた地球外天体は、直径約15キロメートルの小惑星ではないかと考えられています。この衝突のとき作り出された物質が、世界中の350か所で白亜紀後期の地層中に観測されています。現在、チチュルブクレーターを地上に確認することはできません。海の中にあるのです。Google Map で確認してみましょう。メキシコ湾の南側に位置していることを確認できます。

中央のマークされた位置がチチュルブクレーター (c) Google Map


衝突の衝撃で、地球上の物質が瞬間的に大量に放出され、太陽からの光を遮り、急激に寒冷化した結果、数日中に大半の生物が死滅したと考えられています。

太陽光はまさに自然の恵みですが、こんなふうにしてその恵みを受けられなくなることもあるのです。それでも、現在の地球で私たちが生きているのは、この大量絶滅があったからこその話。もし、大量絶滅がなかったら、どんな生物が地上を歩いているでしょうか・・・

2018年4月19日木曜日

恐竜と鳥は親類関係?

 子どもたちに大人気の恐竜。大型肉食恐竜のティラノサウルスや、大型草食恐竜のステゴザウルスなどは、ずいぶん広く知られています。これら恐竜は、今からおよそ 6,600万年前に絶滅しました。

 大繁栄した恐竜は、絶滅で確かに存在は消えてしまいましたが、進化によって姿を変え、現代にも生き延びています。その一つの例は、ティラノサウルスなども含まれている竜盤類と呼ばれる生物の一部から、鳥類へと進化したと考えられています。

 そんな恐竜の研究で、ジュラ紀(1億9960万年前にはじまり、約1億4550万年前)に生きていた「スカンソリオプテリクス」と呼ばれる恐竜の化石に、両手首から長い棒状の骨が伸び、その骨と手指との間に皮膜状の組織が残されている様子が発見されました(Nature 521, 70)。実はこの恐竜は、羽毛が生えていたことがわかっています。この化石の発見は、恐竜のなかには「飛ぶ」ための構造として、ムササビやモモンガのように「滑空」するための構造も持っていた可能性を示しています。

 進化の研究からは、スカンソリオプテリクスの仲間が、後に鳥類へ進化したと考えられています。恐竜に限らず、生物は長い長い時間をかけて、姿を変えて環境に適応しながら生き延びています。

 私たちが食べているトリ肉は、もとをたどれば恐竜だった、と考えるのはあまりに短絡的かもしれませんが、そう思って食べると味わいも変わるかな?

2018年4月18日水曜日

科学オタクな中高生を探しています!

 メンター(mentor)、メンティー(mentee)という言葉があります。mentor がいる人を mentee と呼びます。mentor とは「指導者」という意味です。そしてmentee とは「(特定の指導者による)指導を受けている人」です。

 日本ではあまり馴染みのない言葉ですが、海外ではかなり一般的な言葉だとか。海外の中高生がより進んだ教育を受けたいとき、大学教員から直接指導を受け、自らの能力を高めるという制度があるそうです。

 科学が好きで、学校の科学部などで活動している中高校生が、より専門的な指導を受けたいと思っても、現在の制度ではなかなかそういう機会に恵まれません。そこで、日本科学協会は「サイエンスメンター制度」を行っています。キャッチフレーズは「科学オタクな高校生、探しています」。

 この制度は、メンティーとなる高校生と、メンターとなる大学教員を結びつけるものです。中高校生が進めたいと考えている研究分野の専門家を、自分で探すことは大変です。そこで、日本科学協会のメンバーが、さまざまなネットワークを通じて適切な大学教員を探し出し、その人に指導してもらえるように段取りをつけましょう、というわけです。

 指導を受けるといっても、大学教員がいつもその場にいるわけではないので、電子メールでのやりとりが必要になります。夏休みやそのほか都合を合わせて、高校生に大学に出向いてもらい、大学の実験室などで研究を進めることもあります。

 今年度の募集はこちらのページに公開されています。「我こそ科学オタク」という高校生のみなさん、ぜひどうぞ。

2018年4月17日火曜日

「はしか」が流行?

ニュースでも取り上げられていますが、沖縄で「はしか(麻疹)」に感染した方が増えており、学級閉鎖が行われたり、沖縄への観光旅行のキャンセルが出ているということです。今回のはしかは、台湾からの旅行客が感染源だったことがわかっていますが、今後、急速に拡大するおそれもあり、注意が必要です。

はしかは麻疹ウイルスによって発症します。このウイルスの感染力は極めて強いことが知られており、免疫のない人々の中に1人の感染者がいた場合、12〜14人程度もの人々が感染してしまいます。さらに、感染すると約 90パーセントの人が発症することが特徴で、症状は高熱と全身の発疹が見られます。

一度、はしかに感染して発症すると免疫を獲得し、その後の感染を防ぐことができます。それ以外には、はしかを予防する手段は予防接種しかありません。日本でのはしかの予防接種が任意接種だった時期があり、念のためご自分が接種を受けたかどうかを確認しておいたほうがよさそうです。こちらのNHKニュースの記事に、はしかの予防接種の実施状況が示されています。母子手帳などで記録を確認することが確実です。

日本では 2007年から 2008年に大きな流行がありました。そのため、この後5年間にわたって中学1年生と高校3年生に相当する年齢時に予防接種を行うことで感染の拡大を防ぎました。

2015年、世界保健機構(WHO)は、日本がはしかの排除状態(日本の麻疹ウイルスによる感染が3年間確認されないこと)にあると認定しました。しかし、この後も海外からの麻疹ウイルスが日本に流入し、感染の広がった例が報告されています。

あと数週間後にはゴールデンウィークが控えており、多くの人々が旅行などを計画していることでしょう。感染する可能性があるという人は、一度主治医に相談されるといいかもしれません。

2018年4月16日月曜日

昨今の学生の就職活動事情

この時期、大学 4年生が就職活動を行っています。私のゼミに所属する学生たちがときどき、履歴書や ES を見て欲しいと研究室にやってきます。ES とは「エントリーシート」のことで、私たちの年代の人々が就職するときには存在しなかったような気がしますが、私が受けた就職試験にはたまたまなかっただけかもしれません。

そのような書類を見ていると、注意書きにこんなことが書かれていました。

  • 消すことができるペンで記入しないこと

果たして、消せるペンで履歴書を書く学生がいるでしょうか。就職活動などで先方に提出する書類を、ボールペンで書くことは当たり前だと思っておりました。なにも書類に注意書きとして示さなくても、その程度のことは誰でも理解していると思っていたのですが。

ただ、私たちの時代にはボールペンといえば消えない筆記具として通用していましたが、みなさんもご存知のとおり、こすると消えるインクが大ヒットする時代。もしかすると、そんなインクで履歴書を書いてしまう人がいるのかもしれません。

さらに履歴書や募集要項をよく読むと、さまざまな注意事項が書かれています。まるでそれだけでもマニュアルのように思えるほどです。さらに驚くのは、履歴書や ES を書くための「虎の巻」が何種類も販売されていること。「虎の巻」とはすでに死語らしいのですが、今風にいえば「カンペ(カンニングペーパー)」ですね。ガイドブックが何種類も書店に並んでいます。これらの本には、ご丁寧に書くべき具体的な内容や、マーカーで色をつけたり、マスコミ関係に提出する場合には、目立つようにさまざまな色のマーカーで美しく仕上げる(私から見ると相当に派手と思ってしまいましたが…)のがいいのだ、とか書かれています。

提出された応募書類のうち、これらのガイドブックに「ならって」書かれたものはいったいどれほどあるのだろうかと、ふと疑問に思いました。現代社会では「自分らしく」とか「個性」などのキーワードでくくられるように育ってきた世代の学生ですが、このような本が売れているということは、もしかすると学生たち自身が「自分らしい」ということを認識できなくなっているのかもしれません。大学 3年生の 3月までは個性豊かでセンスのいい服装をしていた人々が、4年生になったとたんに、みんなが同じような服装に一変します。

「みんなと同じ」ことに安心感をもつのか、あるいはそのように教えられるからなのか、私にはわかりませんが、それほどみんなと同じことが重要なのかどうか、就職試験が終わってから考えることが必要かもしれませんね。

2018年4月15日日曜日

花粉を利用した年代測定

この時期、なにかと厄介者扱いされる花粉ですが、科学的には重要なはたらきをすることが知られています。

花粉は植物の種類によって形や大きさに特徴があり、しかも極めて丈夫です。大昔の花粉であっても、そのまま地層に残されています。気温や湿度などによって、その環境で繁栄する植物は異なります。

寒冷地に広がる針葉樹のトウヒ属や、比較的温暖な気候で生育するカシワ属やクルミ属、湿地に広がるミズバショウ属など、地層にどんな花粉が含まれているかによって、その地層がつくられた年代の気候がわかります(私は専門ではないので、おおまかにしか理解していませんが、さまざまな植物の生育分布と気候を結びつけることができます)。

この研究は、世界中のさまざまなところで行われており、地球上の環境がいつ、どのように起こったかが明らかにされつつあります。

このような研究を花粉分析というのですが、学生の頃に実際の地層サンプルから花粉を取り出し、顕微鏡で花粉を同定(その花粉がなんの種のものかを決めること)する実習がありました。ほんとうにいろいろな種類の花粉がありますが、私は花粉の形の違いを覚えられず、とても困った記憶があります…

2018年4月14日土曜日

地球外生命体からのメッセージが届いたら…

昨日は「総合講座I」で地球外生命体を話題にしたと紹介しました。そして「もし、地球外生命体からメッセージが届いたら、あなたはどうしますか?」と問いかけました。

学生のみなさんが答えてくれたことと同様に、まずは分析することが必要でしょう。相手が何を伝えようとしているかわからなければ、答えようがないかもしれません。メッセージの意味がわかっても、あるいはわからなかったとしても、次の行動はメッセージの送信かもしれません。なにか声をかけられたら、なんらかの回答をしなければ、と考えることは人間の本質なのかもしれません。

先日亡くなった、スティーブン・ホーキング氏はかつて、「地球外生命体からのメッセージには返答すべきではない」と語っていました。地球外生命体は必ずしも友好的かどうかはわからない、というため。地球にターゲットを絞ってメッセージを送るくらいであれば、なんらかの明確な目的をもっているのかもしれません。

もし、ホーキング氏の考え方に同意するとしたら、地球人は宇宙空間に自分の存在をむやみに「宣伝」することは控えた方が賢明ということでしょうか。しかし、残念ながらそれは手遅れのように思います。

なぜなら、私たちはすでに探査機「ボイジャー1号・2号」に地球人のメッセージを載せて、太陽系探査のために打ち上げているから。これらの探査機は現在、太陽系の外縁まで到達し、これからは太陽系をどんどん離れていきます。また、宇宙物理学的には地球からは赤外線や電波など、天体の大きさにしては不自然な放射が起こっています。

はるかに遠い将来、地球外知的生命体が、宇宙空間に漂う「ボイジャー1号・2号」を見つけるかもしれません。地球は非常に小さすぎて、なかなか観測できないでしょうが、探査機に搭載された地球人からのメッセージを確認することで、太陽系のある惑星には知的生命体が存在していることを知るかもしれません。そのとき、その知的生命体はそういう行動をとるのでしょうか…?

2018年4月13日金曜日

授業科目「総合講座I」

法政大学経済学部では、春学期に「総合講座I」という授業科目が金曜の 1時限に開講されています。この授業は、複数の教員がひとつのデーマに沿って講義を担当する「オムニバス」という形式で行われ、教員 4名が数週間ずつ担当します。

今回のテーマは「異文化コミュニケーション」で、授業の概要は
一般に私たちは日本語を使って人々の間でコミュニケーションをとっているが、使用する言語が違えば文化的な側面も異なってくる。いくつかの文化圏を取り上げ、そのような文化と私たちがどのように関わりあうことができるかを探る。また、科学は特有の言語で伝えられることが多いが、私たちが科学を理解し、知識を共有する取り組みである「科学技術コミュニケーション」にも触れ、理解を深める。
というものです。このようなオムニバス形式の授業は、半年の間にいろいろな専門家の幅広い話を聞くことができるという利点があります。

本日は最初の授業でしたので、この科目の取りまとめ役になっている私が担当となり、どのような内容か、評価はどのように行うかなどを説明しました。私以外の 3名の先生方は文化圏というキーワードを通じてコミュニケーションを講義される予定ですので、私からは自然科学的な分野からの話題として(初日ということもあり、柔かい話題として)、「地球外生命体とのコミュニケーションはどうあるべきか」という話題を紹介しました。

もちろん、現時点で地球外生命体が確認されているわけではありません。地球外生命体が地球人に向けて特定のメッセージを送ったり、あるいは地球にやってきたりという事態は科学的には極めて非現実的です。とくにアメリカのロズウェル事件として有名な「未確認飛行物体(UFO)に乗って宇宙人がやってきて、軍が宇宙人を解剖した」などという話は、さまざまな面から総合的に考えると、おそらく事実ではないのでしょう。

そんな話題を紹介しながら、学生たちに「地球外生命体からメッセージを受け取ったとしたら、あなたならどうするか」と聞きました。「まず、何を伝えているのかについて、言語学の専門家を集めて解析する。地球上に似た文字をもつ文化圏があるかもしれない」という答えが返ってきました。続いて、「メッセージに返答するつもりか」を尋ねると、8割ほどの学生が「返答したい」と答えました。この答えについて正解はありませんが、多くの専門家がいろいろな考えをもっています。今後、このことを紹介していきましょう。

さて、みなさんならどうしたいとお考えですか?