2016年5月17日火曜日

強い力

 自然界の4つの力のひとつは重力。次は「電磁気力」です。皆さんになじみがあるのは磁石の力でしょう。磁石が金属などを引きつける力は、この電磁気力によるものです。電流が流れると、そこには力が発生することが知られていますが、これが電気力と磁力は一見べつの力のように思えますが、実は同じものであることはずいぶん古く(19世紀)から明らかになっていました。

 この電磁気力は、重力と同様に無限遠まではたらきます。磁石のN極とS極は引き合いますが、私たちが「磁石が引き合っている」と感じ取ることができる距離よりもっと離して置いていたとしても、これらの磁石は引き合っているのです。

 私たちが日常生活で実感する自然界の「力」は、重力と電磁気力によるもので、ほかの2つの力(「強い力」と「弱い力」)を実感することはできません。

 現代社会は電力の供給を受けながら大きく発展しました。私たちの社会はこの電磁気力によって支えられていることは、誰もが感じていることでしょう。今年の夏、日本政府は家庭や企業に対する節電要請を行わないこととしました。節電行動の浸透や、発電量に余裕ができたため、過去5年間にわたって行ってきた節電要請は必要ないと判断したとのこと。真夏の暑い時期にクーラーを使わないで熱中症になってしまっては困りますが、節電要請がないからといって電気を無駄遣いしていい、というわけではありません。必要なところは適切に電力を使いながら、節電行動を日常のものにしていくことが必要ということでしょうか。

2016年4月25日月曜日

車の渋滞の原因は…

 今日、車で中央自動車道を走りました。高尾山インターチェンジから都心に向かったのですが、この道はよく渋滞し、高速道路なのに低速道路になります。

 渋滞する主なところは、上りでは調布から高井戸の区間。ここは渋滞の原因がいくつか存在するようです。私の感覚では、この区間に大きなカーブがあり、そこで渋滞するようです。それに、この区間にはたしかバス停があり、そこでの合流路線も原因のように思います。

 道路に渋滞はつきものですが、その原因はなんでしょう。合流する路線があれば、そこは渋滞します。合流路線では安全上、速度を落として進みますし、入ってくる自動車を本線に入れなければなりません。このようにすると、どうしてもその区間は自動車の流れが悪くなり、渋滞の原因となります。

 また、カーブに差しかかる前には速度を落とします。運転の経験のある人はわかるでしょうが、前の車がブレーキを踏むと、後ろの車もブレーキを踏みます。この連鎖が次々に起こると、速度が極端に落ちて渋滞の原因となります。しかし、この例では車間距離を十分にとっていると、必要以上に速度を落とすことはなく、渋滞は発生しません。車間距離が短いために起こる渋滞というわけです。

 車間距離をとることは、急ブレーキを防ぐために非常に有効な手段です。それと同時に、渋滞を防ぐこともできるのです。急ぎたい気持ちはわかりますが、車間距離を短くして走行することは交通事故の発生確率を高めるだけでなく、さらに渋滞を引き起こすという大問題もあったのです。

2016年4月24日日曜日

宇宙に浮かぶシャボン玉

  更新をさぼっていたうちに、季節は春本番となりました。桜の時期もとうに過ぎ、若葉が目立つ頃です。

 今日は「宇宙に浮かぶ」シャボン玉をご紹介します。もちろん、子どもたちが遊ぶシャボン玉ではありません。ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、星の爆発した後のようすです。写真に青く美しいシャボン玉を確認できるでしょう。このシャボン玉までの距離は 7,100光年。光の速さで 7,100年かかって届く場所です。

Credit: NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team

 このシャボン玉の直径は 7光年。このシャボン玉の内部には、かつて太陽のような星がありました。といっても、太陽のおよそ 45倍の質量をもった、重い星だったと考えられています。写真をよく見ると、時計の10時の方向が明るくなっています。これは、この方向にあるガスが濃いという状況を示しています。爆発した星は、シャボン玉の中心ではなく、ややずれたところにあったと考えられています。

 この写真はの色はガスの成分に対応しています。青は酸素、緑は水素、赤は窒素を示していて、それらを合成して作成されました。

2016年2月13日土曜日

自然界の4種類の力〜重力

 自然界には4種類の力があると書きました。その力とは、「重力」・「電磁気力」・「強い力」・「弱い力」の4種類。

 アインシュタインの相対性理論は、私たちが生きている空間(たて方向・横方向・高さ方向=3次元)と時間(1次元)を、「時空」というひとまとまりのものであると考えて、この時空のゆがみが重力であるとして組み立てられたものです。つまり、アインシュタインの相対性理論とは重力を説明するための理論だったのです。

 アインシュタインが提唱した時空は4次元です。私たちは4次元の世界に生きているのです。次元とは学校の数学の時間に学んだ「座標」と思い出していただけば、理解できるでしょうか。空間中の位置を示すために「たて・横・高さ」の3つの軸に目盛りをつけ、(たて, 横, 高さ)の形で表せば、ただ一つの場所を明確に示すことができます。時間は進む方向が一つしかない(過去 → 現在 → 未来)ので、1次元で表すことができます。時空はこれらを合わせて表現するので、4次元となるわけです。

 相対性理論では、重力をどう説明しているのでしょうか。アインシュタインは、重力とは時空のゆがみである、と考えました。重い物質と軽い物質があれば、重い物質の周辺の時空のほうが大きくゆがむ、というわけです。光はこの時空のゆがみのとおりに進むので、重い物質の近くを通る光は本来の位置から少しずれて見えるはずです。このことは、1919年にイギリスの天文学者エディントンによって確かめられています。皆既日食を利用して、太陽(=重い物質)の近くを通る光がわずかにずれて見えることを確認したのです。

一般相対性理論による空間のゆがみ  (C) せんだい宇宙館

 相対性理論は、このようにして時空という考え方によって重力現象の説明を試み、すべてが理論の予測どおりになっていることが確かめられてきたのですが、重力波の直接的な確認だけができていなかったのです。この重力波が、アメリカの研究チームによって先日確認され、アインシュタインの相対性理論は正しかったという証拠がまた一つ確かになった、というわけです。

2016年2月12日金曜日

重力ってなに?

 12日(金)の午前1時過ぎに、BBCニュースの速報が届きました。「アメリカの研究チームが重力波の検出に成功したと発表した」との内容でした。その後のニュースでは、さまざまな番組で重力波が取り上げられ、皆さん重力波には詳しくなったことと思います。ところで、重力とはなんなのか、ということを考えたことはありますか。

 重力とは、「『もの』がほかの『もの』に引き寄せられる力」のことをいいます。では、なぜこの重力が存在するのかという疑問が生じてきますが、それはまだわかっていないのです。現在の物理学では、自然界の法則として「重力が存在する」ということを受け入れているわけです。

 さらに、この重力はどんなに遠くへも伝わっていきます。てのひらに載せたりんごが地球に引かれる力(この力の大きさを「重さ」といいます)を感じることはできますが、あなたが北極星に引かれる力を感じることはできません。しかし、感じないだけで、あなたと北極星は引き合っているのです。地球に引かれる力が圧倒的に大きいために、感じないだけです。

 この世の中の「力」には4つの種類があり、重力はその一つです。ほかの力については次回お話しすることにしましょう。

2016年2月7日日曜日

宇宙からのX線を調べる

 X線といえば、何を連想するでしょうか。病院で骨や肺のようすを映し出す「レントゲン写真」などは馴染みがあるかもしれません。ほかにも、物質の結晶がどのようなつくりをしているかなど、小さな構造を調べることにも利用されます。

 さらには、天体から届くX線をとらえ、その天体でどのような現象が起こっているかを調べることもできます。そんな役割を果たす日本の人工衛星が「X線天文衛星 ASTRO-H」で、2月12日に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。

 物体を加熱していくと、よりエネルギーの高い電磁波を放出します。私たちが見ることのできる可視光も、X線も、電子レンジに利用されているマイクロ波も、電磁波です。X線は可視光よりも高い温度で発生します。可視光は太陽から放出されていますが、太陽の表面はおよそ 6,000度。X線が放出されるためには、およそ数百万度の温度が必要です。

 宇宙にはこれほどの温度になる現象がいくつかあります。たとえば、ブラックホールや中性子星など重力の強い天体のまわりにつくられる「降着円盤」というガスの円盤があります。これは、天体のまわりをぐるりと取り巻いているものです。この円盤の中では、ガス同士が摩擦によってどんどん温度が上がり、X線を放出するほどになります。

はくちょう座 X−1 の想像図。左側の円盤が「降着円盤」で、中心部分にはブラックホールがあると考えられている。ブラックホールは右側の星からガスを引き寄せてガス円盤をつくる一方で、円盤の上下方向に激しいガスの流れ(宇宙ジェット)を吹き出している。(C) NASA/CXC/M.Weiss


 ASTRO-H は、これらの「活動的な」天体現象を明らかにするために打ち上げられる衛星です。宇宙空間には、まだまだその仕組みがよくわかっていない、激しいエネルギーを放出する天体がたくさんありますが、いろいろな研究手法が提供されれば。そのような天体の仕組みも少しずつ明らかになっていきそうです。

2016年2月2日火曜日

牡蠣に忍び寄る新たな脅威

 「海のミルク」とも呼ばれる牡蠣(カキ)。牡蠣は海で生きる貝類の一種ですが、その牡蠣にかつては考えられなかった脅威が迫っていることが、最近の研究で明らかになりました。

 牡蠣などの二枚貝は、海水を大量に吸い込み、からだの中のフィルターのようなもので水中のプランクトンをこし取って栄養を得ています。新たな脅威とは、プラスチック。牡蠣が好むプランクトンとほぼ同じ大きさの、小さなプラスチックが海中に大量に存在しており、そのようなプランクトンを吸い込んでしまうと牡蠣は繁殖能力が落ちてしまうということが明らかになりました。

 海に捨てられたプラスチックは、海の中でどんどん小さく壊れていき、やがてマイクロプラスチックと呼ばれる6μm(0.006 mm)という極めて小さな破片になります。このマイクロプラスチックは、牡蠣の腸にたどり着き、栄養分を吸収させにくくしてしまうのです。

 このような海中のマイクロプラスチックは、ムール貝やナマコなどにも影響を与えているのではないかと心配されています。このままだと、海の生物の生態系に大きな影響を与え、私たちの食糧としての海産物を確保できなくなる可能性もあります。

 一般的なプラスチックは自然界で分解されることはありません。このようなプラスチックの廃棄処分が自然環境に対する影響を最小限に抑えるため、さまざまな対策が必要です。

2016年2月1日月曜日

ジカウイルス

 海外のニュースサイトでは、ジカウイルス(Zika virus)が話題になっています。このウイルスは 1947年に確認され、長くアフリカと東南アジアで発生するものと考えられてきました。しかし、医科学的に記述された論文が少なかったこともあり、広く認識されていた伝染病とは言えなかったようです。

 2007年には西太平洋のヤップ島で大流行が発生しました。ヤップ島を含む近辺の島を訪れていた多くの旅行者が、その後ブラジルに上陸したことで急速に南アメリカ、中央アメリカ、メキシコ、さらにカリブ諸島へと感染が広がったことがわかっています。

 それほど大流行した理由はいくつか挙げられます。多くの人々がこのジカウイルスに免疫をもっていないため、感染するとそのまま発症してしまうこと、またジカウイルスを運ぶ蚊の生活圏は数百メートルの範囲内でしかありませんが、自動車や列車、飛行機などによって遠くまで運ばれていくことが指摘されています。

 症状は発疹や筋肉痛、関節痛のほか、発熱が数日続き、ほとんどは自然治癒するものですが、感染した妊婦から小頭症の子が生まれたことが数例確認されたため、大きなニュースになっています。しかし、ジカウイルスと小頭症との関係はまだよくわかっていません。

 日本で大流行するという可能性は、今のところは脅威となっていませんが、東京を中心にデング熱が発生したこともありました。デング熱もジカウイルスと同様に、蚊が媒介する病気です。必要以上に心配する必要はありませんが、家の周りに不必要な水の溜まり場をつくらないとか、蚊がいそうなところへは長袖・長ズボンで出かけるなどの配慮が必要になのでしょう。

2016年1月26日火曜日

富士山の見える場所

 今日は静岡へ出かけました。以前、このブログでも紹介した、「サイエンスメンター制度」に応募した高校生のうち、一次審査を通過した人々に直接会って、最終的に採択を決めるため、県内の高等学校へ行きました。

 移動中、電車の窓から富士山を見ることができます。今日見ることができた富士山は、写真のとおりたいへん美しく見えました。雲のかかっていない富士山を見るのは、ずいぶん久しぶりのような気がします。

東海道線から眺めることができる富士山
 法政大学の市ヶ谷キャンパスは、「千代田区富士見」という地名の場所にあります。その名のとおり、富士山を見ることができるわけですが、都心の高層ビルのため、道を歩きながらでは見られません。大学の高層のビルからは、晴れた日であれば遠くに小さく見ることができます。

 さて、私たちが訪問した高等学校は、室温が低いような気がしました。それもそのはず、静岡県内の学校の教室には、暖房設備がないとか。北海道育ちの私には驚きですが、そんな話を帰る道すがら聞きました。皆さん寒くないのでしょうかねぇ。

2016年1月21日木曜日

暑さの記録を更新した2015年

 今日はいろいろなニュースがメディアで取り上げられました。現職閣僚の「政治とカネ」の問題、9番目の惑星の存在が示唆された研究の発表、世界的な株価の下落など、さまざまでしたが、米海洋大気局(NOAA)と米航空宇宙局(NASA)が2015年の地球の気温観測の結果をまとめたニュースも発表されました。

 この報告によると、2015年は観測記録が存在する 1880年以来、もっとも平均気温が高くなったとか。日本は「猛暑」という印象はなかったので意外に感じるかもしれませんが、エルニーニョの発生・継続によって高い温度になり、地球全体の年平均気温は1901年から 2000年の平均気温より 0.90℃ 高いものとなりました。

1901年から2000年の平均気温からの差を示したグラフ(C) NCEI/NESDIS/NOAA

1901年から2000年の平均気温と2015年の平均気温の差を示したマップ。世界的に平均気温が高く、2015年は記録的な年であったことがわかる (C) NOAA/NASA

 地球環境の変化の原因を探ることは、実はかなり難しい問題です。人間の産業活動による要因が大きいのか、あるいは地球そのものの性質であるのか、多くの研究者が解明を進めています。ただ、産業革命以降の温度上昇は、それまでの地球環境が経験したことのないものだった、ということです。

 気温の変動が人間の活動によるものであれば、その対策を急がなければなりません。それは、地球の温度の変化する時間スケールは、人間が環境に変化を与える時間スケールより長く、今すぐに産業によって大気中に排出される二酸化炭素などの「地球温暖化ガス」をゼロにしても、気温の上昇が止まるのは何年も後のことと考えられるためです。

 「取り返しのつかないことになる前に、なんらかの対策を取らなければならない」と考えているのが、世界的な趨勢です。ただ、この話は純粋な科学の話ではなく、さまざまな国の政治・経済的な状況が絡んでいるため、なかなか話がまとまらない、というのが現実のようですが…