X線といえば、何を連想するでしょうか。病院で骨や肺のようすを映し出す「レントゲン写真」などは馴染みがあるかもしれません。ほかにも、物質の結晶がどのようなつくりをしているかなど、小さな構造を調べることにも利用されます。
さらには、天体から届くX線をとらえ、その天体でどのような現象が起こっているかを調べることもできます。そんな役割を果たす日本の人工衛星が「X線天文衛星 ASTRO-H」で、2月12日に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。
物体を加熱していくと、よりエネルギーの高い電磁波を放出します。私たちが見ることのできる可視光も、X線も、電子レンジに利用されているマイクロ波も、電磁波です。X線は可視光よりも高い温度で発生します。可視光は太陽から放出されていますが、太陽の表面はおよそ 6,000度。X線が放出されるためには、およそ数百万度の温度が必要です。
宇宙にはこれほどの温度になる現象がいくつかあります。たとえば、ブラックホールや中性子星など重力の強い天体のまわりにつくられる「降着円盤」というガスの円盤があります。これは、天体のまわりをぐるりと取り巻いているものです。この円盤の中では、ガス同士が摩擦によってどんどん温度が上がり、X線を放出するほどになります。
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はくちょう座 X−1 の想像図。左側の円盤が「降着円盤」で、中心部分にはブラックホールがあると考えられている。ブラックホールは右側の星からガスを引き寄せてガス円盤をつくる一方で、円盤の上下方向に激しいガスの流れ(宇宙ジェット)を吹き出している。(C) NASA/CXC/M.Weiss |
ASTRO-H は、これらの「活動的な」天体現象を明らかにするために打ち上げられる衛星です。宇宙空間には、まだまだその仕組みがよくわかっていない、激しいエネルギーを放出する天体がたくさんありますが、いろいろな研究手法が提供されれば。そのような天体の仕組みも少しずつ明らかになっていきそうです。
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