2022年8月1日月曜日

子ども理科実験教室!

7月 30日(土)、法政大学多摩キャンパスの近くにある団地「グリーンヒル寺田」で、夏休み恒例のイベント「子ども理科実験教室」を開催しました。グリーンヒル寺田では、毎月最終月曜日に「星空探検隊!」という天体観測会を行なっていますが、「星空探検隊!」に加えて夏休み特別バージョンとして開催しているものです。もちろん子どもだけでなく、大人も参加できるイベントです。

午後1時から午後4時 30分まで、休憩時間をはさんで3種類の理科実験を提供しました。実験は、

  • ペットボトルの中に雲をつくる実験と、夕焼け空が赤い理由をペットボトルを使って理解するための実験
  • 「つまめる水」をつくる実験
ペットボトルの中にしっかりした雲ができると、「わー!」とか「できたー!」と声が上がります(もちろん、きちんとマスクを着けて、換気も万全です)。夕焼け空を再現する実験では、「こっちからだとオレンジに見えるよ!」とか、「夕焼けと同じ!」などと聞こえてきます。子どもたちだけでなく、大人も一緒に実験を行うことが、この実験教室の特徴です。大人も子どもに負けないほど、興味津々に実験に参加していました。そんな実験中の写真をご紹介しましょう。写真撮影にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。


小さな「つぶ」をつくってみました。青いイクラ⁈

「つまめる水」をつくっています! 大きいのが欲しいんだけど、できるかな? 



今回の子ども理科実験教室には、私のゼミ生2人(内冨椋介くん、長澤慎太郎くん)が手伝ってくれました。ご協力をありがとうございました。

私たちが行っている「子ども向け(もちろん大人も)理科実験教室」は、みなさんの家にあるものでできる理科実験を提供します。出張教室のご依頼があれば、日程を考慮の上、ご協力いたしますので、電子メール(m.fujita@hosei.ac.jp)でご相談ください。

今月の「星空探検隊!」はいつもどおり、最終月曜日(29日)にいつものところで行いますので、お楽しみに!

2022年7月18日月曜日

【講演会のご案内/健康都市大学・やまとみらいカレッジ】宇宙の現在・過去・未来

健康都市大学「やまとみらいカレッジ」で、8月27日(土)から毎週土曜日、5回連続で「宇宙の現在・過去・未来」と題した講演会が大和市桜丘学習センターで開催されます。講師は藤田貢崇が務めます。

 宇宙に対するあなたの関心はなんでしょう。

宇宙の始まり、宇宙の将来、この宇宙に存在するいろいろな天体、あるいは地球外生命体などでしょうか。あなたの宇宙に対する疑問を解き、さらなる疑問につなげる講義が始まります。日程と内容をお知らせいたします。詳細はこちらのウェブサイトをご確認ください

  • 8月27日(土) 第1回…驚き!   宇宙の広さ

「広い世界」の代名詞となる「宇宙」ですが、その大きさを実感することは難しいことです。いろいろな方法で、宇宙の広さを実感し、どうやってその大きさを知ることができるのかを学びましょう。

  • 9月3日(土) 第2回…地球のまわりになにがある?

地球上にはものが溢れています。では、宇宙空間はどうなのでしょうか。地球の近くの天体についての知識を確認しながら、太陽系や銀河系などについて学びましょう。

  • 9月10日(土)第3回…もっと遠くを眺めよう!

私たちにとってはとてつもなく巨大な銀河系でも、宇宙全体を考えれば小さなもの。銀河系を抜け出て、この宇宙にはどんなものがあるかを写真などを見ながら理解しましょう。

  • 9月17日(土)第4回…宇宙の「もと」はこんなに小さい!

広い宇宙の始まりはビッグバンから、とはよく聞く言葉ですが、 そのさらに前には何があったのでしょうか。宇宙の始まりを探りながら、 とても小さな世界についての知識を深めましょう。

  • 9月24日(土)第5回…これから宇宙はどうなる?

宇宙のはじまりがわかれば、宇宙のこの先も知りたくなるでしょう。現代天文学で考えられている宇宙の将来像を学び、この宇宙に私たちが存在する意味について、考えてみましょう。

現在、申し込みを受け付け中です。受講対象は「市内在住・在勤・在学の方」とされていますが、該当しない方でも、ご希望であれば

大和市桜丘学習センター 046-269-0411 

までお問い合わせください。みなさまの受講をお待ちしております。

2022年6月6日月曜日

「灰汁(あく)」ってなに?

 5日(日)の NHKラジオ「子ども科学電話相談」で、『コンニャクとゴボウ・ニンジンを炒めたら、コンニャクが緑色に変わってしまいました。熱のためですか、それとも野菜のためですか?』という質問がありました。

確かめるには、(1) コンニャクのみを炒めて色が変わるかを確かめる、(2) コンニャクとゴボウを炒める、(3) コンニャクとニンジンを炒める、の3パターンを確認すれば、なにがコンニャクの色を変えるのかがわかります。でも、今日のお昼ご飯のおかずだったので、そんな時間はないし、作っちゃったし…   となれば、「子ども科学電話相談」に電話! でしょうか。

コンニャクの色を変えたものは、ゴボウでしょう。ゴボウには「クロロゲン酸」という物質が豊富に含まれていて、クロロゲン酸はアルカリ性になると緑色を示します。よく耳にする「ポリフェノール」の一種で、ポリフェノールは植物がもつ苦みや色素の成分の総称で、5,000種以上もあるといいます。ポリフェノールには酸性やアルカリ性のもとでは、色が変わるものがあります。たとえば、紫キャベツに含まれるアントシアニンもポリフェノールです。

よく、野菜を調理するときに「灰汁(あく)を取る」ことがありますが、クロロゲン酸は灰汁の成分の一つで、「苦み」や「えぐ味」をもちます。子どもが野菜を嫌うのは、この苦みのせいだと言われることがありますが、逆に大人はタラの芽やコゴミなどの独特の苦みを楽しんだりします。

子どもはもともと、野菜の素材がもつ苦みは好みません。大人になるまでの過程で、いろいろなものを口にして「慣れていく」ことで、ふつうに食べられるようになるとか。みなさんにも経験があるのではないでしょうか。そんなことが記された記事を、かつて Science Window (科学技術振興機構)の「いただきますの向こう側」(2010年春号)という特集記事にまとめましたので、興味のあるかたはぜひ、PDFでご覧ください。

2022年6月4日土曜日

宇宙ゴミ ―スペース・デブリ―

宇宙ゴミに関心がある学生さんも、少なからずいるようです。

宇宙ゴミ(スペース・デブリともいいます)は、人間が打ち上げたロケットの部品や、役目を終えた人工衛星がそのまま地球の衛星軌道上に漂っているものです。宇宙飛行士がうっかり落としてしまった工具や手袋などまであるそうです。

この宇宙ゴミがどれだけあるかを NASA が発表しています。以下の図は、NASAで確認している直径が 10 cm を超える宇宙ゴミを白い点で示しています。


直径 10 cm 以上の宇宙ゴミ ©︎NASA


これらの白い点が宇宙ゴミです。「こんなにたくさん…!」と思うかもしれませんが、さらに遠方まで広がっています。宇宙に打ち上げられた人工衛星やロケットの切り離した部品は、回収されてこなかったため、こんなにあるのです。

この宇宙ゴミは、現在活動している人工衛星や宇宙ステーションに衝突することもあります。わずかな凹みなどで終わればいいのですが、加速した宇宙ゴミは凶器と同じです。人工衛星を破壊してしまうことも考えられます。 2011年6月28日には、国際宇宙ステーションに宇宙ゴミが接近し、乗員が避難した騒ぎもありました。また、2009年には、アメリカの衛星携帯電話会社 Iridium Satellite 社の通信衛星 “Iridium 33”と、すでに役目を終えて宇宙ゴミとなっていたロシアの軍事衛星 “Cosmos 2251” が衝突し破壊され、さらに700個近い新たな宇宙ゴミをつくり出してしまいました。

現在とられている対策は、ロケットの打ち上げ時には破片が出ないような設計をする、あるいは役目を終えた人工衛星は地球の大気圏に再突入させてしまう、などのほか、宇宙ゴミを回収する人工衛星の開発が進められていますが、まだ有効な手段は明確になっていません。

2022年5月17日火曜日

電子はいつも均等に分布するのか?

今年度の「物理学」の授業では量子物理学を扱っています。原子の構造は、原子核(陽子と中性子の集合体)の周囲に電子が存在していますが、この電子は「電子雲」のように広がった存在をしています、という話題を提供しました。中学校や高等学校では、以下のような図を学んでいて、とても規則正しく電子が位置しているようなイメージをもっているはずです。

酸素原子は原子核に8個の陽子をもつので、その周囲には8個の電子が存在して、電気的に中性(つまり、プラスマイナス0)になっています。

酸素原子の原子核(中心部)と周囲の電子の配置モデル

受講者から、こんな質問が寄せられました。

電子が電子雲として存在しているのであれば、電子が偏って存在することもあるのですか。

答えを先に言うと、「あります」。一般に、高等学校までの学習内容では、分子は電気的に中性になっていると学びますが、実際には必ずしもそうなっているわけではないのです。

身近な物質で、電子が偏って存在しているものがあります。その例は水です。水は酸素原子が1個と水素原子が2個でできる分子ですが、このとき電子が偏って存在します。高等学校までの知識では、プラス1の電荷をもつ H が2個と、マイナス2の電荷をもつ O2− が結びつけば、電気的に中性的になると考えられます。

ところが実際には、分子は必ずしも中性を示しません。水は、以下の図のように電子が偏って存在しています。

©︎ Kyowa Interface Science Co., Ltd.

1個の水分子でも、酸素に近いところは電子が偏って(つまりこの付近は電気的にマイナス)存在しています。逆に、水素の付近では電気的にプラスになっています。こうすると、水分子同士は酸素原子のマイナスの電荷と水素原子のプラスの電荷が引き合って、「水素結合」と呼ばれる結びつき方を示します。水分子で、この水素結合が強いことが、水の表面張力がほかの物質に比べて大きいことを説明できると考えられています。