2022年5月17日火曜日

電子はいつも均等に分布するのか?

今年度の「物理学」の授業では量子物理学を扱っています。原子の構造は、原子核(陽子と中性子の集合体)の周囲に電子が存在していますが、この電子は「電子雲」のように広がった存在をしています、という話題を提供しました。中学校や高等学校では、以下のような図を学んでいて、とても規則正しく電子が位置しているようなイメージをもっているはずです。

酸素原子は原子核に8個の陽子をもつので、その周囲には8個の電子が存在して、電気的に中性(つまり、プラスマイナス0)になっています。

酸素原子の原子核(中心部)と周囲の電子の配置モデル

受講者から、こんな質問が寄せられました。

電子が電子雲として存在しているのであれば、電子が偏って存在することもあるのですか。

答えを先に言うと、「あります」。一般に、高等学校までの学習内容では、分子は電気的に中性になっていると学びますが、実際には必ずしもそうなっているわけではないのです。

身近な物質で、電子が偏って存在しているものがあります。その例は水です。水は酸素原子が1個と水素原子が2個でできる分子ですが、このとき電子が偏って存在します。高等学校までの知識では、プラス1の電荷をもつ H が2個と、マイナス2の電荷をもつ O2− が結びつけば、電気的に中性的になると考えられます。

ところが実際には、分子は必ずしも中性を示しません。水は、以下の図のように電子が偏って存在しています。

©︎ Kyowa Interface Science Co., Ltd.

1個の水分子でも、酸素に近いところは電子が偏って(つまりこの付近は電気的にマイナス)存在しています。逆に、水素の付近では電気的にプラスになっています。こうすると、水分子同士は酸素原子のマイナスの電荷と水素原子のプラスの電荷が引き合って、「水素結合」と呼ばれる結びつき方を示します。水分子で、この水素結合が強いことが、水の表面張力がほかの物質に比べて大きいことを説明できると考えられています。

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