2020年3月3日火曜日

ところで、ウイルスってなにもの?

新型コロナウイルスが蔓延するのではないかと心配されている今日この頃。ニュースなどではいろいろな側面から取り上げられていますが、「ウイルスとはどういったものなのかがあまり知られていないのではないでしょうか。ウイルスとはなんなのでしょう」という質問をペンネーム・チャメさんからいただきました。

コロナウイルスという名前は知られていても、ウイルスとはそもそもなんなのか、ということについては、あまり知られていないかもしれません。今回はウイルスと感染症について基本的なことを理解しましょう。

鼻炎や咽頭炎などのような、いわゆる風邪を引き起こす原因はウイルスです。また、抗生物質は細菌には有効でも、ウイルスには効果がありません。風邪で病院にかかっても抗生物質が処方されないのはこのためです(もちろん、細菌による感染症と診断された場合には抗生物質が処方されます)。


ウイルスはタンパク質からできている殻と、その内側に遺伝物質である核酸をもつという、非常に簡単な構造からなっています。ウイルスは多くの生物とは違い、自分で殖えることができません。ウイルスが殖えるためには、ほかの生物の細胞を利用します。生物の特徴である「核酸をもっている」という一方で、「自分で殖えることができない」という非生物的な面を合わせ持っているのです。また、ウイルス自身でエネルギーをつくることもできないため、やはりほかの生物の細胞を利用します。

細胞はほかのものが内部に入ってこられないようにしっかりと守られていて、細胞表面の「鍵穴」にはまる「鍵」をもっているものでなければ侵入を許さないしくみになっています。細胞のもつ鍵穴は、身体の組織ごとにそれぞれ違っています。ところが、ウイルスの表面にはこの「鍵」のはたらきをする突起が付いていて、この鍵で開けられる鍵穴をもった部分にとりついて、細胞の内部に侵入してしまいます。喉が痛い風邪にかかった場合はウイルスが喉の表面の細胞にとりついたことになりますし、お腹の不調をともなう風邪にかかった場合はウイルスが消化管の細胞にとりついたということです。

ウイルスがこのようにして細胞に侵入し、自らを増殖させる状態になることを「感染」といいます。とても簡単に言うなら、細胞がウイルスに乗っ取られた状態です。

私たち生物は、細胞をウイルスに乗っ取られたままでは困ります。そのため、さまざまなしくみが備わっています。私たちがウイルスに感染したことを脳が感知すると、体温を上げるように指令を出します。筋肉が震えて熱を出したり、汗の量を減らして熱が逃げないようにしたりするわけです。つまり、風邪を引いて熱が上がるとウイルスが増殖しにくくなると同時に、私たちの免疫細胞がより活発にはたらくためです。

あるいは、腸にウイルスが感染したりすると下痢になります。これは単純に言うと、腸管内のウイルスを身体から早く排出しようとして下痢を起こしてしまうわけです。鼻水や咳も、このようにウイルスを身体から出してしまおうとするためのしくみです。このように、私たちのウイルスという外敵に立ち向かうためのしくみが、逆に私たちに「つらい症状」を引き起こしているわけです。

「風邪を引いてだるい」というのは、それは「休養してほしい」という身体からのメッセージ。風邪で発熱した場合の37度ほどは、人間がもっともだるく感じる体温だとも言われます。可能な限りは休養と栄養、それに水分を十分にとって、免疫細胞がウイルスに戦っている状態を応援してください。

数日しても快復しないのであれば、身体の免疫反応が、ウイルスの増殖に打ち勝てない状態になっているかもしれません。そのときは病院を受診することが必要です。医師に症状と経過を正しく伝え、あなたの状態にあった処置を受けましょう。あらかじめこれらのことを書いたメモを作っておけば、医療関係者にスムーズに伝えられますね。


今、問題になっている新型コロナウイルスの日常的な対策は、私たちが日頃、感染症にかからないための予防策と同じ。きちんと手を洗い、栄養と睡眠をしっかりとることが重要な予防方法です。


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