2016年8月9日火曜日

広島と長崎

 この2016年の夏も、NHKラジオ第一放送の『夏休み子ども科学電話相談』で、たくさんの子どもたちからの質問が寄せられています。その質問の中に、次のような質問がありました。
  • どうして広島と長崎に原爆が落とされたのですか。
 それぞれ動物や植物、昆虫といった専門分野の回答者の方々は「『科学』には、こういう質問もくるんですねぇ」と、感心とも驚嘆ともつかない声が放送前に交わされました。この質問は、「科学」つまり私に寄せられた質問です。自然科学ではない質問ですが、小さな子どもたちにとっては、何が自然科学で何が自然科学でないのか、その線引きは重要ではないのでしょう。しかも、このような質問に的確に答えられる大人はどれだけいるでしょうか。

 放送には採用されていない質問でしたが、その答えとも言える番組が NHK で先日放送されました。『決断なき原爆投下~米大統領 71年目の真実~』です。

 この番組をもとに、寄せられた質問に答えると、
  • 原爆開発の責任者である、陸軍グローブズ将軍らは原爆の投下地点として、軍事施設があり、空襲を受けていない 17の都市を選んだ。新型爆弾の威力を確認するため、周囲が山で囲まれた地形の都市であることなども条件だった。
  • その中で広島と京都が有力候補になった。しかし、選ばれた都市に軍事施設が存在するという根拠は薄く、当時のトルーマン米大統領は「米軍が無差別殺人を行った」と国際的に非難されることを恐れ、一般市民に多大な犠牲者が出ないようにするため、京都には投下しないように軍に指示した。
  • その結果、軍は原爆投下の都市として、軍事拠点である ①広島 ②長崎 ③小倉 ④新潟 を提示した。これらの提示された都市は軍事都市であると強調されていたが、これらの都市には一般市民も暮らしていた。軍は新型爆弾の開発・実証のため、投下地点の検証を十分に行っていなかった。
  • 陸軍グローブズ将軍が作成した原爆投下指令書には、「原爆を広島、小倉、新潟、長崎のうち一つに投下せよ。それ以降は準備ができ次第、投下せよ」と記されていた。
 このようにして広島・長崎に原爆が投下された後、その現状の報告を受けたトルーマン大統領は「新たに10万人、特に子どもたちを殺すのは、考えただけでも恐ろしい」と8月10日の会議で述べ、その後の原爆投下の計画を中止したと、当時の政府関係者の日記に記されています。

 原爆開発のために多額の費用をつぎ込んだ軍の「できるだけはやく原爆を使用し、実証したい」という思惑と、原爆の使用による国際的な批判を受けることは避けたい、また戦争終結後の日本を取り込む方策を考えた政府の思惑とがすれ違っていた事実が番組では明らかにされました。

 上に書いたことを、小さい子どもたちが理解することは難しいかもしれません。しかし、自然科学と同様に、社会のしくみや歴史的事実について、「なぜだろう」と考え、尋ねたり調べたりすることで、自分の考え方が醸成されていくことを大切にしなくてはいけません。

 質問してくれたお子さんに、このことが伝わるといいのですが。

0 件のコメント:

コメントを投稿