2016年5月24日火曜日

地球温暖化対策へのモチベーション

 4月21日号の Nature に、“Recent improvement and projected worsening of weather in the United States” という論文(日本語訳「米国における気象の近年の改善と予測される悪化」)が掲載されました。

 「地球の平均気温が上昇し、これは人間活動が大きく影響している」と言われていることは皆さんもよく聞くことと思います。過去の気温変動について詳細に調査されており、過去30年のそれぞれの10年は、1850年以降のすべての10年より温暖で、世界平均の気温データは1880-2012年の間で 0.85℃ の上昇を示していることが国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書で発表されました。

世界の地上気温の経年変化(年平均)(C) 全国地球温暖化防止活動推進センター


 将来の気候変動によって、世界の多くの地域が次第に人間が住むためには適さない環境になっていくことが予想されています。しかし、現実には気候変動を抑えるための社会的な対策になかなか支持を得られません。なぜでしょうか。

 先の論文の著者 P Egan と M Mullin は、アメリカ国民の 80%が 40年前よりも気象が好ましい地域に住んでいることを明らかにしました。現在、ほとんどのアメリカ国民は彼らが一般的に好む非常に温暖な冬を過ごしており、以前よりも不快な夏の暑さになったという悪い変化を感じていないらしいことを示しています。そのため現状の気象状況では、アメリカ国民が気候変動の対策として政治的な要求を行う動機付けにはなりにくいと考えられています。将来予測によると、いずれアメリカの夏は冬よりも温暖化するため、アメリカ国民は気候温暖化をより実感し「好ましくない」と判断するだろうとも考えられています。

 社会的な要求は、それぞれの個人が日常的な経験をどのように実感するかにかかっている、という主旨の論文です。科学者が気候変動の結果を示し、世界的な取り組みが必要であると考えるときには、市民を納得させる手法を考えなければならない、ということでしょうか。

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