2015年4月7日火曜日

異常気象の「異常」って、どれくらい?

 今年の春学期は、「地球環境論A」という科目を担当しています。3年生以上が受講対象となっている専門科目です。さまざまな環境問題を取り上げながら、なぜそのようなことが起こったのか、どのような対策がとられているのか、未然に防ぐ方法はなかったか、などを科学的に考えていく内容になっています。

 このような授業内容では、「異常」とはどういうことなのかを、定量的にきちんと判断しなければなりません。当然ながら自然現象は完全に一定ではなく、ある程度の変化の幅があります。変化の幅が小さい状況であれば、「こんなこともありますね」で終わりますが、変化の幅が大きければ、「異常だ」となるわけです。このようなことは降水量や気温などで皆さんも実感していることと思います。

 さて、「異常気象」の定義はなんでしょう。気象庁は、「過去30年間の気候に対して、著しい偏りを示した天候」と定めており、世界保健機関では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が25年以上に1回しか起こらない程度の大きさの現象」としています。平年とは、30年間の観測値の平均のことです。厳密な定義は存在しない、とも言えます。

 この平年を定めるための30年間は、例えば今年は2015年だから1985年から2014年の値を使用しているかといえば、実は違います。1981年から2010年までの30年間の観測値をもとに、平年値を求めているのです。これは、「西暦の末尾が1となる年に更新する」と決められているためです。次に平年値が更新されるのは2021年ということになります。

 異常気象に話を戻すと、気象庁の「異常気象レポート 2014」には、
平成 17(2005)年までの状況を報告した前回の異常気象レポート以降、世界各地で多数の人的被害をもたらす気象災害が発生しました。この間、日本においても顕著な 大雨・大雪そして熱波・寒波が発生しており、「異常気象」という語からはもはや「珍しい、まれである」という印象が消えつつあります。また、近年は世界的に気温の高くなる年が頻出しており、着実に進む地球温暖化の気候に与える影響が顕在化し始めています。
と書かれています。年々気温が高くなったり、降水量が増えていくと、それだけ平年値にも反映され、かつてよりは「異常」に近づいていくわけです。

 すぐに「異常、異常」と騒ぐ前に、今一度、本当に異常であるかをよく考えてみないと、いざというときに「またか」ということになって、適切な対応を取ることができない、ということにもなりかねません。自然災害はいつなんどきやってくるかわからず、その時々で的確・迅速な対応が必要です。「備えあれば憂いなし」の言葉にもあるように、しっかり対策をとっておきたいものです。

0 件のコメント:

コメントを投稿