2014年2月12日水曜日

就職活動に踊る企業・踊らされる学生

大学3年生で民間企業への就職を希望する学生は、今がもっとも忙しい時期になります。いつからか就職活動のことを「就活」と呼ぶようになり、授業や試験の出席に対しても「就活だったので」と、まるで免罪符のように口にします。それはいかがなものかと思いますが。

情報産業は学生たちが消化不良になるほどの資料を発送します。すべてに目を通すことなどできないことは、十分に認識しているのでしょう。さらにひと昔前とは違って、今は電子メールやウェブサイトがあるため、送信する側もコストをそれほどかけずに、大量に送ります。

就職を希望する企業が開催する会社説明会に出席し、企業が行う業界セミナーなどを受け、エントリーシート(通称ES)を作成します。このエントリーシートによって筆記試験の受験者を選別するのだとか。筆記試験が終われば、グループ面接だの個人面接だのと、さまざまな段階を踏んで進みます。

さて、このエントリーシート。容易に想像がつくとおり、多くの企業で求める記入項目は似たり寄ったりです。いちいち作るのは面倒だなあ、とは誰もが思うこと。今度は「一度入力しておけば、それらの情報を志望先の企業が必要に応じて入手する」システムを用意しよう、ということくらいは気の利いた(?)情報産業の企業であればどこでも思いつきそうです。

このシステムをつくり上げた情報系企業は、学生を相手にしながら、企業も相手にしています。情報はできるだけ多くを集めていた方が、何かと有利だろうと考えるのは当然です。このシステムでは、「受験者をよく知る人からの紹介文」のような項目をつくり、その推薦者の氏名や所属、メールアドレスなどを入力するのだとか。情報系企業は、この項目は必須ではないことを受験者である学生に知らせ、企業には推薦ではないので扱いに注意するようにと伝えています。

しかし、そのような項目があれば、しっかり書きたいのは学生の気持ちでしょう。一生懸命に紹介文を依頼するかもしれません。一方の企業には、その情報を就職活動にだけ使うとは限らないかもしれません。世の中にはさまざまな企業が存在します。やがてはセールスのための連絡先になっても、そう不思議ではありません。いくら個人情報保護法があるといっても、必ずしも守られていないことは新聞などにも掲載されています。

さて、このような「受験しやすいシステム」ができて、当の学生たちは手間が省けたと喜んでいるかもしれません。しかし、「受けやすくなる」のはあなただけではないのです。ほかのみんなも、同じように受けやすくなったのであって、より競争率が上がることは容易に想像できます。企業の側でも、膨大な数の受験者をさらに「合理的に」選別する必要が出てきます。

そんなことを考えると、第一段階の選別で、より客観的に選別できる方法を取らざるを得なくなるのは当たり前のことのように思います。便利になった分、どこかで大変な思いをする、ということは、物理でいう「仕事の原理」と同じでしょうか。

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