さて、今日は授業で太陽系について説明していました。学生さんたちはいろいろな疑問をもっているようです。
かつて太陽系には9つの惑星がありました。2006年に、国際天文学連合(IAU)で「惑星の定義について」の会議が開かれ、冥王星は惑星ではなく、準惑星という分類となりました。
このとき、アメリカはかなり反対したそうです。冥王星はアメリカ人が発見した惑星だったから、とも言われています。冥王星は1930年、アメリカ人のクライド・トンボーが発見した惑星です。トンボーはアリゾナ州のローウェル天文台で、新しい惑星を発見するための研究に取り組んだ人物です。当時最先端の方法だった、夜空の同じ領域を別の日に写真撮影し、その間で動いている星を探し出す、という方法で発見したそうです。
真ん中が冥王星。ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したもの。(C) NASA |
国際天文学連合で決められた惑星の定義は、
- ほぼ球形となるほどの十分な質量がある
- 恒星のまわりを巡る軌道をもち、恒星でも衛星でもない
- その付近の小さな天体を一掃している
天体、とされました。このように決まるまでは、多くの議論がありました。天文学や観測機器の発達によって、太陽系のより遠いところまで観測されるようになると、冥王星の周辺には小さな天体がたくさんあることがわかってきました。こうなると、惑星の条件である 3. を満たさなくなってしまうのです。
冥王星を含む、その近くにある天体を「太陽系外縁天体」と呼びます。これらの天体の表面は氷で覆われており、その組成を調べてみると、彗星をつくっている成分と同じであることがわかってきました。そうなると、太陽系外縁天体は、かつて太陽系ができたころの成分をそのまま残している、いわば「原始太陽系の遺跡」となります。今後の研究の進展で、太陽系がどのようにつくり出されたかがより明らかになっていくでしょう。
惑星か、惑星でないかは、「惑星探査のための研究費の獲得」という政治的な問題も絡んで、論争になりました。冥王星を探査するには、準惑星というよりも惑星、といった方が重要度が高そう、という気がしないでもありません。
しかし、冥王星の分類が変わっても、冥王星であることに変わりはなく、その科学的な価値も変わるわけではありません。感情的な理由や予算上の理由などから分類名にこだわったのは人間だけで、宇宙は何も変わっていない、ということは、言い方を変えれば、「人間の日々の活動は宇宙の悠久さには遠く及ばない」ことを示しているようにも思います。そう感じるのは私だけでしょうか。
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