2018年8月2日木曜日

サンゴ礁を取り巻く危機

Nature Video の日本語解説記事の最新版が、Natureダイジェストのウェブページにアップロードされました。この暑さですので、涼しげなサンゴの研究を取り上げました。ぜひ、お読みください。簡単に内容をお伝えすると…

サンゴ礁は「海の熱帯雨林」とも呼ばれており、多くの生き物のすみかとなっていて、生態系で重要な役割を果たしています。サンゴ礁はクラゲやイソギンチャクと同じ仲間のサンゴによって造られます。そう、サンゴ礁は動物が造ったものなのです。サンゴは石灰質の骨格をつくります。小さな小さなサンゴが、長い年月をかけて大量に集まってサンゴ礁を造り上げていたのです。

サンゴの生態はよくわかっていません。それは、小さなサンゴを海中で直接観察することが難しい、ということがあります。近年、海中で使用できる顕微鏡が開発され、サンゴの生態が明らかになってきました。ウェブページの映像をご覧ください。

そのサンゴ礁が、危機に脅かされています。それは海水温の上昇と、海中のゴミのためです。サンゴは海水温が高くなると、内部に共生させている「褐虫藻」という植物が逃げ出してしまい、最悪の場合はサンゴが死んでしまうのです。また、海中に捨てられたゴミがサンゴを傷つけ、プラスチックの表面に付着した病原菌がサンゴを弱らせているのではないか、という研究も報告されています。

プラスチック製品は私たちの生活を便利にしてくれましたが、環境に及ぼす影響は、私たちが考えているよりも大きいようです。つい最近、スターバックスがプラスチックストローの削減を発表しました。プラスチックを使っても、どこかに捨てるのではなく、定められた方法できちんと処分するということが、私たちにできる方法かもしれません。


2018年8月1日水曜日

トンネルと新幹線

今日から8月。すでに NHKラジオ第一放送の「夏休み子ども科学電話相談」が7月23日から始まっておりましたが、私のこの夏の担当は今日が初日。いろいろな質問が寄せられておりました。

さて、本日の放送で取り上げた、「新幹線はどうして滑り台みたいな形をしているの?」という質問への答えで、私が考えていた内容を正しく伝えられなかったところがあったように思っていました。

新幹線の先頭の形が滑り台みたいな形(流線型)をしているのは、2つの理由があります。

  1. 空気が乱れず、スムーズに流れるようにすることによって、より速く走行できるようにするために、流線型になっています。
  2. 列車がトンネルに入ったとき、反対側から「ドーン」という音が発生します。この音は、空気鉄砲と同じようなしくみで発生するものです。トンネルに列車が入ると、トンネル内の空気がぐっと縮められます。トンネル内の空気を、列車が「押し込んで」いるわけです。この押し込まれた空気が、音の原因です。この空気はそのままトンネル内を進み、トンネルの出口まで到達すると一気に解放され、「ドーン」という音が発生します。この音の発生をできるだけ抑えるためには、トンネル内の空気を一気に押し込まないようにすればいいわけです。そのため、新幹線の先頭の形は、流線型になっています。
放送では「空気がトンネルから出るときに音が出る」のか、「列車がトンネルから出たときに音が出る」のかについて、適切に伝わらなかったようで、失礼いたしました。上に書いたとおり、「空気がトンネルから出るときに音が出る」のです。

番組の最後にもお話ししましたが、気をつければ正しく伝わるところを、うまく説明できないと、「もやもや」します。飴玉をお湯に入れたときの「もやもや」が気になるように、「もやもや」は気になるもの!?

2018年7月31日火曜日

火星、土星、木星・・・

東京の町田市にある法政大学多摩キャンパスは、自然が豊かな環境にあります。当然、夜空にはきれいな星を見ることができます。ということは、今夜の火星大接近を見てみたくなるのは誰でも同じ。

「明日は朝早いので…」とやや後ろ向きな私(じつは天体望遠鏡を操作するのがあまり得意ではない…)でしたが、いろいろな人々に要望(?)され、天体望遠鏡を出して火星を観ることに。この時期は火星だけでなく、土星や木星も観測できます。土星はリングが存在する様子を確認できるのでは、と期待して望遠鏡を向けていきます。

学生たちだけでなく、「大きなお友達」にも声をかけてみました。そのときの写真が下のものです。一人がレンズを覗きながら、「あ、わぁー」と声をあげると周りの皆さんは笑い声を上げますが、じつは皆さん、大なり小なり同じような歓声を上げます。

観測している前を車が通り過ぎました。キャンパス内の
この場所はほとんど街灯がなく、観測には最適です。
インターネットやテレビ、図鑑などを見れば、きれいな写真を見ることはできますが、やはり自分の目で見ることが大切なのかもしれません。「科学する心」というのは、今日の土星や火星を見たときのような、臆せず歓声を上げられる心なのかもしれませんね。

2018年7月30日月曜日

火星大接近!

ここ数日であれば、真夜中に真南の30°くらいの高さに、赤く輝く星を見ることができるはず。これは火星です。国立天文台は「今日のほしぞら」というホームページを通じて、どんな天体が、いつ、どの位置に見えるかという情報を提供しています。このページは天体観測の強い味方になりそうです。

新聞やテレビでも大きく取り上げられているとおり、火星は7月31日に地球に大接近します。これから9月ごろまでは明るく輝いて見えているので、明日が曇って星を見ることができなくても、次の機会を待ちましょう。

大接近といっても、このときの火星までの距離は 5759万キロメートル。月までの距離の150倍という遠いところにある天体ですので、双眼鏡で何かが見えるというわけにはいかないようですが、天体望遠鏡を使えば、火星表面の模様は確認できるとのこと(ビックカメラの特設ページ)。

「これを機会に天体望遠鏡を買おう!」という人以外は、近くの科学館やプラネタリウムで観望会などが行われるでしょうから、ぜひお出かけください。「科学館」とお住いの地名などでインターネット検索をすれば、近くの施設を知ることができるでしょう。

子どもたちにとっても、思い出に残る夏休みになるといいですね。

2018年7月24日火曜日

太陽系の過去のピースを持ち帰る

数日前、日本の小惑星探査機「はやぶさ2」の現在の状況について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から記者発表がありました。現在(7月24日)は、「はやぶさ2」は小惑星リュウグウから20キロメートル離れたところに位置しています。8月に入ると、リュウグウから5キロメートルのところまで接近して、表面の状況などを観測することになっています。

「はやぶさ」は、世界で初めて小惑星(イトカワ)の一部を地球に持ち帰り、その成分を分析したという成果を残しました。「はやぶさ2」はその後継機であり、「はやぶさ」を上回る成果を得るため、さまざまな工夫が凝らされています。

この「はやぶさ2」が何を目的をしていて、どんな工夫がされているかを紹介した Nature Astronomy に掲載された日本語記事『太陽系の過去のピースを持ち帰る』(原題:“Bringing home a piece of our past” が一般公開されていますので、ぜひご覧ください(無料でご覧いただけます)。

Nature Astronomy は天文学の最新の成果が発表される学術雑誌です。科学探査機の目的や、期待される成果などが詳細に紹介されることもあります。今回は「はやぶさ2」による探査に関して取り上げられた記事が掲載され、多くのみなさんに知っていただくために日本語に翻訳されました。

「はやぶさ2」の最新の状況は、こちらのページで確認できますので、関心のある方はご覧ください。