2024年9月1日日曜日

プールのにおいのもとは?

 9月 1日(日)のNHKラジオ第1「子ども科学電話相談」は、台風関係のニュースや関東地方での地震についてのニュース速報で何度か中断されましたが、小さなお友だちのいろいろな質問が取り上げられました。

その中で、私が答えた質問の一つに、「プールに入っているお薬って、なに?」というものがありました。プールには消毒のために次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が溶かされています。この化学物質は水中で次亜塩素酸(HClO)になり、強力な酸化作用をもちます。この酸化作用によって、細菌やウイルスをやっつけることができるのです。

ところが、次亜塩素酸が細菌やウイルスにはたらくと、酸化作用を失ってしまいます。そのため、プールには常に新しく次亜塩素酸ナトリウムが投入されます(もちろん、薬剤の適切な濃度が定められていますので、際限なく投入されるわけではありません)。

次亜塩素酸が減少してしまう理由はほかにもあり、水中にアンモニアが存在すると結びついてしまいます。これはクロラミンと呼ばれる物質になります。このクロラミンは、特有のにおいをもっていて、プールに特有なにおいになります。

さて、番組でははっきりとはお話ししなかったのですが、水中に存在するアンモニアはどこからやってくるのでしょう? 人間がプールに入れば、もちろん汗が出ます。プールに入る前に、しっかりと汗を流しきれなかったのかもしれません。この汗には微量ながらアンモニアが含まれています。

さらに、人間の尿には尿素という物質が含まれ、尿素はアンモニアと構造が似た物質です。「え〜!」と悲鳴が聞こえそうですが、プールの中で意図的でも意図的でなくても、尿がでてしまうことはあるようです。プールの塩素消毒と人間の尿との作用について述べた論文があります1。次亜塩素酸と尿素が結びついても、クロラミンが生成されます。ここでの尿素は、人間の尿を起源とするものと考えられており、プールの利用者の衛生週間の改善が不可欠である、と述べています。

プールを利用する前は、事前にトイレに行き、シャワーでしっかり汗などを流してから、楽しく泳ぎましょう。


1. Lushi Lian, Yue E, Jing Li & Ernest R Blatchley 3rd. Volatile disinfection byproducts resulting from chlorination of uric acid: implications for swimming pools. Environ Sci Technol. 18;48(6):3210-7 (2014).

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