試験が近づくと、さまざまな学生が研究室にやってきます。さすがに、「単位をください」という学生はおりませんが。授業内容についての質問です。そんな中に、「太陽風」についての質問がありました。太陽からは、常に風が吹いています。これを太陽風と呼びますが、その速度はどれくらいか、という質問です。
太陽風には高速のものと低速のものがあり、高速だと 700~800 [km/s]、低速でも 300~400 [km/s] という速さです。高速の太陽風は高緯度の領域から、低速のものは赤道付近の低緯度の領域を起源としていることがわかっています。
この太陽風は、現代天文学でも大きな謎を秘めています。これほどの大きな速度になる理由がよくわかっていないのです。なんらかの加速メカニズムがあるはずですが、今もってその決定打が見つかっていません。磁場が何らかの役割を果たしているだろうと考えられています。
太陽風には、荷電粒子(電荷を帯びた粒子、つまり陽子や電子)が含まれており、太陽風が強力になると、地球の磁場にはたらきかけ、人間活動に影響を及ぼします。現代の地球は、多数の電波による通信が行われています。この電波が影響を受け、通信が途切れてしまったり、地上の送電線が影響を受け、電気をふだんどおりに流せなくなったりということが起きます。
太陽風の影響が及ぶ範囲が太陽系である、と考えることができます。惑星探査機のボイジャー1号・2号は1977年に打ち上げられましたが、現在、ボイジャー1号はすでに太陽系を離れ、「星間空間(interstellar space)」と呼ばれる領域を航行中です。現在地をこのページで確認できます。太陽風の影響を受けない領域に到達するまで、実に30年以上が経過しているわけです。
ボイジャーは現在も信号を出し続けています。ボイジャーが感じている太陽系の外側は、どんな世界でしょうか。私たちがその領域の情報を得るのも、もう少しかもしれません。
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