2025年12月30日火曜日

ホットプレートの上の湯気

28日(日)の NHKラジオ「子ども科学電話相談 冬休みスペシャル」で取り上げられた、「ホットプレートからの湯気はどうしてまん中に集まるの?」という質問。

質問してくれたお子さんは、ホットプレートの蓋をした状態で、蓋の周りから出てくる湯気がまん中に集まることを不思議に思って質問してくれました。これは、湯気のような形のない「流体」には壁に沿って移動する「コアンダ効果」がはたらくので、出てきた湯気は蓋に沿って流れていくのです、と説明しました。コアンダ効果は多くの人が気づいている現象ですが、その現象に名前があるとは意外だったようで、メモに書き留めた人もいらしたようで…

ホットプレートは餃子や焼肉、お好み焼きなどで使うことが多いでしょうか。そのようなときには換気を十分にしているでしょうから、湯気が静かに上るところを見るのは難しいかもしれません。

空気の流れのないところで蓋をしていないホットプレートからでる湯気も、まん中に集まります。なぜでしょう?

ホットプレートは面が均等に加熱されているわけではなく、真ん中の部分が強く加熱される製品が多いことと思います。ホットプレートの上の空気は上昇気流となって上に進みますが、中心部分の温度が高いため、まん中の空気がより速く進みます。その部分の空気が少なくなってしまいますが、自然界は真空を嫌うため、速く進んで空気が少なくなった部分には周りから空気が流れ込みます。そのため、湯気はまん中に集まってくるのです。

焚き火で燃えている炎がまん中に集まるのは、これと同じ原理です。

年末年始、ホットプレートを使う機会も増えそうですので、ぜひ立ち上る湯気も気にして楽しい団らんのひとときをお過ごしください。

2025年7月20日日曜日

0.99999… は1?

 7月 20日(日)の NHKラジオ第1『子ども科学電話相談』では、久々に算数の質問がありました。算数・数学は自然科学の基礎です、と言うと具合が悪くなる(?)人がいるかもしれませんが、算数の時間に不思議だな、という気持ちが「おもしろい」につながるかもしれません。今日質問してくれたお友達も、算数をおもしろいと感じていると放送で答えてくれました。

0.9999… のように、小数点以下に同じ数字が繰り返し現れる小数を循環小数といいます。

さて、放送中に「 0.9999… と小数点以下に9が無限に続く数字は、じつは1です」とお話ししましたが、なぜだろうと感じた人もいらっしゃるでしょうから、解説しましょう。これは高校生になってから学ぶことだそうです。

いま、0.9999… となる循環小数を x とします。方程式にすると、

x= 0.9999…     ①

となります。

続いて、この x を 10倍したものを考えましょう。小数点以下は、9の数字が無限に続いているので、方程式にすると、

10 x = 9.9999…     ②

となります。

ここで、②の式から①の式を引きます。左辺は左辺で、右辺は右辺で引き算をするのです。

左辺どうしを引く 10 x− x は、9 x になります。右辺どうしを引くとき、 9.9999… から 0.9999… を引くのですが、9.9999… も 0.9999… も同じ 9 が小数点以下で無限に続く数字です。つまり、小数点以下は同じものになるので、9.9999… − 0.9999… は 9 になります。その結果、

9 x = 9     ③

となって、 x = 1 になります。x はなんだったかといえば、下線を引いた部分の「0.9999… となる循環小数」だったので、なんと、0.9999… は1 ということになるのです。

納得していただけましたか?

2025年2月18日火曜日

銀河 M109 と NGC2903

昨日の 17日(月)は、恒例の「おとなの星空探検隊!」でした。法政大学多摩キャンパス周辺は、夕方までは雲がやや多めでしたが、暗くなってからはきれいな星空になり、無事に観測することができました。

金星・木星・火星と惑星の位置を確認して、冬の代表的な星座の一つ「オリオン座」を確認してから、「ヒアデス星団」や「プレアデス星団」を双眼鏡で観測しました。ヒアデス星団とプレアデス星団は、双眼鏡で非常にきれいに見ることができます。特にプレアデス星団は、肉眼でも「もやっと」した白い塊として認識できます。そこを双眼鏡で覗くと、青っぽい色をした星々を見ることができます。

電子望遠鏡 eQuinox2 を使って、いくつかの銀河を確認することもできました。メシエ天体の中では暗くて観測しにくいとされている銀河 M109 を捉えることができました。

M109

これは「棒渦巻銀河」に分類されている銀河で、中心核を棒状の構造が貫いています。棒は銀河の他の部分と同じように、たくさんの星が集まっているものです。その棒の両端から、腕が伸びています。

同じ棒渦巻銀河で、NGC2903 も確認することができました。棒状構造と腕の構造は、NGC2903 のほうがわかりやすいようです。

NGC2903

棒渦巻銀河は、観測されている銀河のおよそ半分を占めています。私たちの銀河系も、棒渦巻銀河です。一般に、棒渦巻銀河の中心核と棒の部分には古い星が多く存在し、腕の部分には若い星が多く存在しています。

私たちの銀河系は、かつて渦巻銀河だと考えられていました。私が小さい頃に見た図鑑にも、銀河系は渦巻銀河として描かれていました。銀河系がどのような形をしているかは、「スピッツァー宇宙望遠鏡」の赤外線による観測などをもとに、銀河系の詳細な地図が研究によって示され、どんどん精確になっています。

銀河系の想像図(©︎NASA/JPL-Caltech/ESO/R. Hurt

銀河系の形は、どんなに精確なデータを手に入れても、想像することしかできません。それは、私たち人類は銀河系全体を見下ろして観測することができないためです。自分自身を見ることができないことと同じです。

その代わり、似たような形の銀河をたくさん観測することで、私たちの銀河系との比較などを行いながら、さらに精確な銀河系の形や特徴を探し出しているのです。

2025年1月30日木曜日

馬頭星雲

もう1月も30日…   この調子だと、2025年もあっという間に終わってしまいそうです。

東京はしばらく雨が降っておらず、空気が非常に乾燥しています。研究室には加湿器がありますが、朝から運転しても湿度が 20% を上回らないという状況で、さらに花粉の襲来を受けています…

空気の乾燥は困りますが、夜の天体観測には最適です。昨日、電子天体望遠鏡 eQuinox 2 内部のミラーの傾き調整を行った後、馬頭星雲に望遠鏡を向けました。




写真の中心部に黒く「馬の頭」のシルエットが浮かび上がっています。この星雲は、オリオン座の三つ星のうち、最も東側(向かって左)の星 アルニタクのすぐ近くにあるものです。この黒い部分は、背景の星からの光を遮っているために黒く見えているところで、この部分にはまわりよりも密度が高くなっている星間ガスや塵が存在しています。このようなものを「暗黒星雲」と呼びます。馬頭星雲は代表的な暗黒星雲です。

2025年1月24日金曜日

時期はずれのクリスマスツリー

昨年のクリスマスは、楽しく過ごされましたか? まだまだ先のことですが、今年のクリスマスも、楽しいことがあるといいですね。

1月になっておりますが、夜空にはまだクリスマスツリーが輝いています。23日の夜に、天体写真を撮ってみました(星雲フィルターを使用し、画像編集ソフトで赤を強調しています)。



この写真に収められている星々の集まりは、「クリスマスツリー星団」(NGC 2264)と名付けられています。「どこがクリスマスツリー?」と聞こえてきそうです… こんなふうに手描きで線を入れれば、それなりに見えるでしょうか? 


青い星々が、クリスマスツリーのオーナメントとなって、ツリーに巻きついているかのように見えませんか? この星団は、地球から 2,500光年離れたところにあり、誕生してから 100万〜500万年しかたっていない若い星が 100個ほど集まっているものです。青い星は若い星で、表面の温度が非常に高くなっていることを示しています。

この星団は、いっかくじゅう座にあり、オリオン座の近くです。位置を確認してみましょう。

いっかくじゅう座付近の星図(©︎Wikimedia Commons)

いっかくじゅう座の領域のかなり上のほうに、NGC 2264 があります。この時期はオリオン座がとても見やすくなっています。風邪などを引かないように、しっかり着込んで(北海道弁では「まかなって」)夜空を眺めてみてはいかがですか?