2022年5月13日金曜日

ダイヤモンドと鉛筆の芯

ダイヤモンドと黒鉛は、ともに炭素(C)からできています。黒鉛がピンとこない人は、鉛筆の芯を思い浮かべてください。鉛筆の芯の主成分は黒鉛で、硬さを調整するために粘土を混ぜてつくります。

これらのダイヤモンドや黒鉛は、純粋な炭素からできていていますが、ダイヤモンドは自然界でもっとも硬いといわれる一方で、黒鉛は非常に軟らかいものです。同じ炭素でできているはずの物質(このように、同じ種類の元素でできているにもかかわらず、性質が全く異なる物質を「同素体」と呼びます)なのに、なぜもこんなに違うのでしょうか。

それは、炭素原子どうしの結びつき方の違いにあります。

炭素の結びつき方の違い(©︎sience-stock)

上の図のとおり、ダイヤモンドは1個1個の原子が周りの原子としっかり結びつき、このときの炭素原子は「共有結合」という方法で結びついています。

一方、黒鉛は六角形をつくりためには炭素原子は共有結合によってしっかりと結びついていますが、図の上下方向には非常に弱い力でしか結びついていません。この弱い結びつきは「ファンデルワールス力」と呼ばれるものです。

黒鉛がぼろぼろと崩れるのは、このファンデルワールス力が弱い結びつきであるためです。結晶構造が違うと、このように同じ炭素原子でできているのに全く違う性質を示すことができるのです。

2022年5月6日金曜日

「みんなで解決! 子ども科学電話相談」は7日(土)午後6時5分から

「子ども科学電話相談」がテレビに登場! 5月7日(土)の夜6時5分から、NHK総合テレビで「みんなで解決! 子ども科学電話相談」が放映されます。5日(木)のラジオでちょっとだけお話ししたとおり、私の大学のゼミ生とともに、実験を行なった様子が収録され、放送の予定です。何を実験したかは、放送をお楽しみに!

子どもたちからは、とても多くの質問が寄せられます。実際に放送で取り上げられるのは残念ながら、ごく一部。答えられなかった質問の中には、私自身がうまく説明できない、あるいはわからない、というものもあります。

答える内容について自分自身が理解できても、それを子どもたちにわかってもらえる内容にしないと意味がありません。説明を終えて「わかったかな?」と尋ねたときに、電話の向こうのお子さんから「わかんな〜い!」と返答されると、がっくり(orz)くるのです…   そうならないように、何かの喩え話をしてみたり、スケールを変えてみたりしながら、具体的な絵が思い浮かぶような話をします。そのとき、喩え話が正しいのか、自分で実際に確かめたくなります。

また、私自身がまったくわからない、という場合には、実験できるのであれば実験したくなります。ただ、すぐにできる実験もあれば、そうでない実験もあったりします。また、実験ができたとしても、疑問の答えがすぐに結びつくかどうかもわかりません。

今回のテレビで扱われる実験は、なかなかできない実験で、お子さんの質問にはまだ答えを出せていないのですが、ゼミの学生たちと一緒に答えを探している最中なのです…

ぜひ、5月7日(土)の夜6時5分から「みんなで解決! 子ども科学電話相談」をご覧ください!

2022年5月5日木曜日

「テクネチウム」って、なに?

5月5日(木)は、NHKラジオ第一放送の「子ども科学電話相談」の担当でした。大型連休の特別編成ですので、放送時間は朝8時5分から 11時 50分までのおよそ4時間に、「科学」の分野では4人のお子さんが番組に登場しました。

元素についてとても関心のある小学校1年生の男の子は、元素がどれだけあるのかを質問してくれました。彼は元素をしっかり覚えていて、元素名と元素記号をきちんと理解しているようです(こんなときに備えて、私のノートに元素の周期表が貼ってあったのでした…   すべての元素を覚えているはずもない私…)。

結論から言うと、元素は現在 118種類が認められていて、119番目の元素を求めて、日本をはじめ各国の研究機関が研究を進めています。宇宙で最初に誕生した元素は水素です。高温・高圧の初期宇宙では核融合によって、さらに大きな原子核がつくられていきます。このような核融合は、私たちの身の回りの「ふつうの状態」(常温常圧とも言います)では起こりえません。

恒星は核融合で生じたエネルギーをもとにして輝いています。太陽よりも重い恒星の中心部では、鉄までの元素が順につくられていきます。しかし、恒星の中心核で鉄が生成されると、恒星中心部の核融合はそこで止まってしまいます。つまり、恒星内部では、鉄より重い元素はつくられません。それは、鉄より重い元素をつくろうとすると、莫大なエネルギーが必要になり、エネルギーが足りなくなってしまうためです。こうなると、恒星の大気を支えていたエネルギーが失われ、恒星大気が一気に中心部に向かって落下してきます。このとき、大規模な爆発現象(超新星爆発)が起こり、このときに解放されたエネルギーによって鉄より重い元素の合成を進みます。

それでも、この超新星爆発によってつくられる元素はウラン(原子番号 92)まで。それ以降の番号の元素は、人間が科学の力で作り出した、人工的な元素なのです(ただし、ウランが中性子を捕獲することができれば、プルトニウムになることがあります)。

さて、番組の中で、お子さんが「テクネチウム」という元素を口にしました。みなさんはこの元素を聞いたことがあるでしょうか。原子番号 43番で、元素記号は Tc です。実はこの元素は変わり者で、安定同位体のない元素と考えられています。どういうことかと言うと、テクネチウムは放っておくと放射線を出しながら別の種類の元素に変わっていってしまう、ということです。このような状態を「安定同位体がない」と呼びます。

このテクネチウムは、SPECT と呼ばれる医学検査に利用されています。テクネチウムがガンマ線を放射することに着目し、CTでガンマ線を放射している位置を計測することでさまざまな情報を得ることができるのです。

身の回りで目にすることはなくても、いろいろな場所でさまざまな元素が使われている、という事例を紹介しました。

本日の放送分は、6月 30日(木)まで NHKの「聴き逃し」でお聴きいただけます。 

2022年5月4日水曜日

連休で静かな大学構内

大型連休です。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。私はいつもとほとんど変わらない毎日です。

日中は暖かくても、朝夕はまだ気温が低い日々が続いていますが、大学の構内は緑が眩しい季節になりました。研究室の前の並木にも若葉が見え、きれいな景色です。

法政大学 多摩キャンパス 研究・実験棟からの風景

今日は連休時の移動ピークということで、あちこちの高速道路が渋滞しているようです。街中も車が多いように思います。

そんな連休中ではありますが、明日の5日(木・こどもの日)はNHKラジオ「子ども科学電話相談」の回答担当にあたっています。4・5日は特別編成なので、朝8時5分から11時50分までの放送となります。どんな質問が取り上げられるでしょうか…   ぜひ、お聴きください(「聴き逃し」でも提供されます

2022年5月1日日曜日

キラウエアを監視する科学の目

 Natureダイジェストのページで提供されている「Nature Video 活用事例」で、新しい記事が更新されました。今回は「キラウエアを監視する科学の目」です。キラウエアはハワイにある活発な火山。たびたび噴火しており、とても流れやすい溶岩が海岸にまで達します。

日本での火山は爆発的な噴火を伴いますが、そのような火山噴火とキラウエアの噴火は様子が違います。映像をご覧いただき、その違いを確認してください。掲載されている記事では、日本に火山が多い理由や、キラウエアの特徴なども解説しています。

私の出身地の北海道・道南地区には、駒ヶ岳や恵山などの活火山があり、夜景で有名な函館山もかつては火山でした。函館山はおよそ100万年前に噴火し、私の出身・函館中部高校の校歌にも、〽︎火柱のはためく峰も 年経りて緑の臥牛 と謳われています。「臥牛」とは函館山の別名で、街の方から函館山を眺めると「牛が寝そべっている」ように見えるため、そう呼ばれるとのこと。

函館山は気象庁の示す活火山に指定されていませんが、駒ヶ岳は活火山です。周辺には大沼や小沼(「沼」と呼ばれていても湖です…)など駒ヶ岳の噴火によって形成された湖があり、北海道でも有数の観光地になっています。駒ヶ岳はきれいな形をしている火山ですが、もともと駒ヶ岳は富士山などと同じ成層火山で、円錐のような形だったとか。1640年の大噴火で、上の部分が吹き飛び、現代のような形になったことがわかっています。

噴火はときに大災害を引き起こしますので、火山に近いところに住んでいるみなさんは、普段から備えておく必要がありそうです。