2018年7月8日日曜日

どんな種類の鳥の卵も、食べられるの?

前回の話題に引き続き、いただいた質問にお答えしていきます。今回の質問は、「にわとり以外の鳥の卵でも食べられるのでしょうか」というものです。もしかすると、ご家族の健康維持のために、毎日の献立に取り入れる卵料理を考えているときに、ふと生じた疑問かもしれません。

現在、私たちが日常的に利用している「鳥の卵」は、よく知られているとおり、ニワトリの卵ですが、鳥には野鳥も含めて、多くの種類があり、それらも当然、卵を産みます。卵は非常に栄養価が高いため、自然界では多くの生き物が野鳥の卵をえさとして狙っています。

大昔、私たち人間がまさに自然界の中で生きていたときには、おそらくほかの動物と同じように、さまざまな鳥の卵を食べていたのではないか、と一般に推測できると思います。現代社会でも、ニワトリ以外の卵を実際に食べる例があります。たとえば、比較的小さい大きさである、アヒルやガチョウの卵はヨーロッパで食用とされていますし、日本でもウズラの卵は一般的です。世界最大の鳥といわれるダチョウも、その卵が食べられています。

しかし、多くの国では野生の鳥やその卵を捕獲することは、法律などで禁止されています。日本も「鳥獣保護法」によって、許可なく鳥やその卵を捕獲することは禁止されています。

法律で禁じられているというだけでなく、野生の鳥の卵を、店頭で売られているニワトリの卵と同様に扱うことは衛生的にも望ましくありません。野生の鳥の卵の外側には、食中毒を引き起こす可能性のあるサルモネラ菌などが付着していることがあるためです。

店頭に並んでいるニワトリの卵は、養鶏場で卵が集められた後、消毒・洗浄・乾燥され、パックに詰められて出荷されます。この手順が示された有限会社サカイフーズのホームページがありますので、ぜひご覧ください。

2018年7月4日水曜日

海はどこでも塩の濃度は同じなの?

気がつくと、もう7月。東京は梅雨が明けましたが、今日は一日中、降ったり止んだりの天気でした。

さて、知り合いの方から質問が寄せられました。「海は世界中でどこでも同じ塩分なのでしょうか」というものです。海はすべてつながっていることは、いわば常識。ということは、海水の塩分だって、どこでも同じだと思ってしまいますね。

つながっているはずの海ですが、塩分はじつは違っています。

海の水が蒸発することが多いところでは、塩分は高まります。大西洋の亜熱帯の海は、世界の海でも塩分が高く、おおよその数値は 3.58〜3.78パーセント。太平洋では 3.42〜3.56パーセントほど。海に大量の川の水が流れ込んだり、流氷が融けたりする地域の海で塩分は低くなります。地球上では北極付近の海が、もっとも塩分が低く(3.12パーセント)なります。

大洋の年間平均の表面塩分の分布 ©︎ Plumbago

地球上の海で塩分を平均すると、およそ3.5パーセントになるそうです。上の図を見ると、地中海は塩分が特に高いようです。地中海は大きな海流の直接的な流れ込みがないことと、海面からの蒸発量が多いためです。

表面の塩分には、海の場所によって違いがありますが、深さ方向にも違いがあります。塩分が高いということは、密度も高いことになりますので、海底に向かって沈み込んでいきます。この塩分が海の深さによって違いがあるこということで、「海の大循環」という、地球全体での大きな海の流れが起こっているのです。

2018年5月21日月曜日

人間の中での菌のバランス

「菌を移植」と聞くと、少しゾッとするかもしれませんが、近年、人間にとっての細菌の重要性が明らかになってきています。腸内細菌もその一つ。私たちの腸の内部には3万種類にも及ぶといわれる細菌が、およそ数百兆個も存在しているとか。私たちの腸の内面は小さなひだのような構造をとっており、腸の内面の表面積はテニスコート1面分にも相当するといわれます。

腸内細菌は、ビタミンを合成したり、消化を助けたり、あるいは腸に集まってくる免疫細胞をコントロールする役割をも担っているということがわかってきました。いろいろな人の腸内細菌の種類を調べると、その人の生活環境に応じて最近の種類やそれらの比率が異なっていることがわかっています。

潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸の疾患に対して、健康な人の腸内細菌を移植するという治療法が研究されています。これらの疾患は、腸内細菌のバランスが乱れてしまった状況で起こるのではないかと考えられており、患者さんの腸内細菌を一度、抗生物質によって最近をリセットしてから、健康な人の糞を内視鏡で移植する、というものです(当たり前ですが、自分勝手に判断してはいけません)。

さらに、アトピー性皮膚炎に対しても、健康な人の皮膚の常在菌を移植することによって治療を行うという治療法も研究されています。アトピー性皮膚炎は、皮膚の常在菌の種類のバランスが崩れている可能性があり、このバランスを改善することでアトピー性皮膚炎の治療に結びつくのではないか、という研究が進められています。

自然界のバランス(生態系)を守っていくことが大切であると各方面で指摘されていますが、人間の体内の細菌バランスも考えなければならないのですね。

2018年5月15日火曜日

80地点で真夏日だった、ということですが・・・

今日は暑かったと、どのニュース番組でも伝えられていました。私が住んでいる八王子市も、気温は上がっていたようですが、室内にいるだけだとそれほど感じません。まだ建物が温まりきっていないせいかもしれません。室内が暑くなるのも、もうすぐかもしれませんが・・・

某ニュース番組では、「国内の80地点の観測地点で、30度以上の真夏日となりました」とアナウンスされていました。今日の暑さを感じると、80地点は多いなぁ、と感じるかもしれません。でも、よく考えてみると、全国の観測地点とはいくつかなぁ、とも思います。もし、全観測地点が100地点だとすれば、80地点は多いかもしれませんが、全観測地点が1,000地点であれば、多くはありません。全国でいくつ観測拠点があるのかも伝えてくれれば、「確かにたくさんあるよね」と納得するのですが・・・

もちろん、誤った伝え方であるとは言えませんが、数字がどのような意味をもつのか、ということは「全体と部分」、あるいは「数字と単位」などに注意しながら考えなければなりません。広告はこのあたりをうまく使っています。

たとえば、栄養ドリンクに含まれているタウリンを多く含んでいますよ、ということを強調するためには、「タウリン 1000mg 配合」と書いた方が、「タウリン 1g 配合」と書くよりも印象が強くなります。1000 mg も 1 g も同じことです。こういう数字のマジックにごまかされながら(?)、私たちは商品を選んでいるのかもしれませんね。

全国で観測地点がいくつあるのかは、宿題ということで。


2018年5月14日月曜日

海外にお金を送る

みなさんは海外にお金を送ったことはありますでしょうか。最近はインターネットで海外から商品を購入することもできるようになりましたので、いくつかの手段を経験した方もおられるでしょうか。

最近の気軽な方法といえば、PayPal でしょうか。これは、インターネット上に口座をつくり、これらの口座間で資金をやりとりする方法です。日本の利用者の場合、自分の PayPal の口座には銀行振込などではなく、クレジットカードから口座に入金しなければなりません。クレジットカードを持っていない人は利用できないという欠点はありますが、手数料が安いということもあり、広く使われているようです。ただ、かつてクレジットカードの番号を不正に入手し、PayPal を利用して現金化したという犯罪に使われたこともありました。最近はセキュリティーも厳しくなり、そのようなことに利用されないような工夫もされているようです。

ほかの方法としては、銀行口座にあてて送金するものがあります。こちらは各国の銀行が行うものですので、安心感をもって利用できます。ただ、海外の銀行口座を特定するために使われる方法(SWIFTコードやBICコード)があり、なかなか理解しにくい上に、日本では使われていない指定コード(IBANコード【欧州で使われる】やABAコード【米国で使われる】)などが海外振込依頼書に書かれており、銀行の担当者に聞かなければわかりにくいという問題があります。また、送金手数料が非常に高い(円貨口座から送金する場合、最低でもおよそ5,000円程度の手数料になる場合も)ことも事実です。

あるいは、為替証書や小切手で送付する、という方法もあります。銀行送金に比べて手数料も安いという利点があり、万一途中で紛失されてしまっても、取消手続きを行うこともできます。相手に届くまでに時間がかかるという欠点もあるのですが。

私に関係するところでは、国際学会に出席する場合の参加費など、ほとんどの場合がクレジットカードでの決済です。銀行振込の方法は立替払いができないときなど、特別な事情でなければ使われなくなっています。海外にお金を「送る」ということ自体が、クレジットカードの普及でかつてよりも格段に少なっているかもしれませんね。

2018年5月11日金曜日

科学ジャーナリスト賞2018

日本科学技術ジャーナリスト会議が科学技術に関する報道や出版、映像などで優れた成果をあげた人を表彰する、「科学ジャーナリスト賞」の今年の受賞者が先日、発表されました。

今年の科学ジャーナリスト大賞は、信濃毎日新聞社編集局 「つながりなおす」取材班(代表 小松恵永氏)「つながりなおす 依存症社会」(2017/1/3〜6/29)の連載に対して、薬物やギャンブル、アルコールなど様々な依存症に蝕まれる現代社会を幅広い取材に基づき多面的に捉えた秀逸なキャンペーン報道であることが評価され、贈呈されました。

科学ジャーナリスト賞は3件となりました。

1件目は、ドキュメンタリー映画監督・プロデユーサー 佐々木芽生氏「おクジラさま ふたつの正義の物語」(集英社)の著作に対して、クジラやイルカ漁への国際的な批判に対し、関係者への直接的な取材に基づき、異なる文化に立脚する多様な視点を提供した点が評価されました。

2件目は、川端裕人氏「我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な『人類』たち」(講談社)の著作に対して、次々と新発見が続くアジアの多様な原人について、化石発掘現場などを丹念に取材し人類進化の謎を紹介し、知的な興奮を呼ぶ好著であることが評価されました。

3件目は、日本放送協会報道局 政経・国際番組部 ディレクター 安部康之氏らによるクローズアップ現代+「中国“再エネ”が日本を飲み込む!?」の番組に対して、再生可能エネルギーの大量導入を進める中国の動向を紹介し、立ち遅れた日本の状況を浮き彫りにしたこと、またインパクトが大きく日本のエネルギー政策を考える材料を提供したことが評価されました。

今年は、神奈川県逗子市の住宅地にある手作りの科学館である「理科ハウス」館長の森裕美子氏に特別賞が贈呈されました。「身近な科学館」を目指した設立趣旨と地域コミュニティから親しまれている活動ぶりが総合的に評価されたものです。

2006年から毎年発表されている科学ジャーナリスト賞ですが、過去の受賞作はこちらのページからご覧いただけます。

2018年5月10日木曜日

会議を記録するために

最近、「記憶の限りでは」という言葉がニュースを賑わせています。「発言したかどうか定かではない」などという発言が取りざたされていますが、みなさんは会議や打ち合わせのとき、どのように記録されていますか。

一般的には、紙にメモを取ることが多いと思います。誰がどういうことを発言したか、どのような結果になったのか、次の会議までなにを用意しておけばいのか、などについて、短い時間で理解・判断しながら記録していきます。複数の人が記録をとれば、内容がわずかに(ときには大きく)違っているという可能性もあります。事実誤認と言われるものです。その場合は記録を突き合わせながら合意の道を探ります。合意できなければ、その合意を取ること自体が、次の会議の議題になるかもしれません。

最近の会議では、誰がなんと発言したかをより正確に記録するため、誰かが ICレコーダーで音声を記録していることが多くなりました。10年ほど前でも、比較的よく使われていたと思います。これがあれば、誰がなにを言ったのか、丸ごと記録できますし、デジタルデータとして永久的に保存できます。

現在の技術はさらに進んで、記録されたデジタルデータから「文字起こし」をしてくれるシステムも存在します。この技術は改良中で、人工知能(AI)の学習機能を活用し、誤字のない正確な文字起こしを行うための研究も行われています。

さて、最初に述べた話題で、その会議を ICレコーダーで記録していた人はいないのか、とても興味あるところなのですが・・・

2018年5月8日火曜日

原稿用紙、使っていますか?

みなさんが原稿用紙を最後に使われたのは、いつのことでしょうか。マス目が入って、行間が空いている、あれです。小学校の作文を思い出し、夏休みの宿題などのつらい(?)記憶が甦ってきた方もおられるのではないでしょうか。

私のゼミナールで、横書きの原稿用紙を使ってゼミ生に文章を書かせてみました。ゼミ生に聞いてみると、原稿用紙を使ったのは小学校以来という学生もいました。また、最近では大学でのレポート作成や論文などのほとんどが、パソコンのワープロソフトで作成されており、またメモをとることもスマートフォンのカメラで撮影するという、便利な時代になったので、「手書き」という機会が格段に減っています。

原稿用紙の利点は、①どれだけの量を書いたかが一目でわかること、②一度書いた文章を修正(推敲)するとき、行間に書き込む余裕がとられていること、③マス目に文字を書くため、文字を丁寧に書く効果を期待できること、などがあるでしょうか。

逆に、欠点もあります。現代の文章、とくに科学に関する文章には数字や単位、英単語、あるいはアルファベットと数字を組み合わせた記号など、マス目にはめ込みにくい事例が多いことです。これらにはそれなりの記述するルールが設定されていますが、臨機応変に対応することでなんとかなりそうです。

学生の就職試験などのときに、手書きによる書類の提出を求められますが、手書きの文章はそう簡単にきれいに作ることのできるものではありません。このような機会を捉えて、できるだけ文字を書かせて、伝わりやすい内容の文章を作る練習も、学生時代には必要なようです。

2018年5月7日月曜日

運転免許更新の講習

今日、自動車運転免許の更新に行ってきました。免許制度では、この免許更新のタイミングで「更新時受講」を受けなければ、運転免許は更新できないことになっています。一般的には、更新の申請書を提出し、視力検査などの適性検査を行い、そのまま講習を受けるという流れになっています。

講習では、変更となった道路交通関係の法規についての説明や、最近の交通事故の状況について説明され、運転者の注意喚起を呼びかけます。

その中で、交通事故死者数の推移について説明がありました。近年、交通事故死者数は減少傾向にあり、直近の5年間では
2013年  4, 388人
2014年  4, 113人
2015年  4, 117人
2016年  3, 906人
2017年  3, 694人
となっています(警察庁「道路の交通に関する統計」2018年1月発表)。

ここで発表されている「交通事故死者数」の定義は、交通事故によって亡くなったすべての人が計上されているわけではありません。この統計では、交通事故発生から24時間以内に亡くなった方の人数です。

交通事故発生後、24時間を超えてから亡くなってしまう場合もあります。現状を把握するため、「30日以内死者」についても統計が発表されています。最新の統計(警察庁「平成28年における30日以内交通事故死者の状況」2017年5月発表)は2016年のデータのようですので、2013年から2016年までを示してみると、
2013年  5, 165人
2014年  4, 838人
2015年  4, 885人
2016年  4, 698人
となっており、確かに減少傾向にはありますが、事故発生後24時間以内の死者より15〜20パーセントほど多い数値になります。 報道で発表される「交通事故死者数」は、24時間以内の死者数が発表されますが、その数に含まれないままに亡くなってしまう方も相当数で存在する、ということです。

慎重に運転していれば、より注意していれば、防ぐことのできた交通事故が多数あるという講習内容でしたが、悲惨な交通事故の当事者にならないように気をつけたいものです。

2018年5月6日日曜日

火星探査機 “InSight”

5日の朝7時(米国東部標準時間)、アメリカのカリフォルニア州バンデンブルグ空軍基地から、NASAの火星探査機 InSight(インサイト:Mars Interior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport)が打ち上げられました。InSight は今年11月に火星の赤道付近に着陸し、火星の地震に関する調査や地形の測地、熱の計測などを通じて火星内部の構造の研究データを収集する予定です。

火星は地球の外側に位置する惑星で、地球から見ると赤い星として観測できます。赤く見える理由は、表面に酸化鉄が大量に存在しているため。酸化鉄とは私たちの身の回りでいうと、赤さびです。これまでも火星には探査機が打ち上げられており、表面の様子が写真撮影されています。

下の写真は、現在も運用されているNASAの火星探査機キュリオシティが撮影したもの。火星のシャープ山(Mt. Sharp)からの光景です。

(C) NASA/JPL-Caltech

このように、火星にはこれまでも探査機が送られています。今回のインサイトの特徴は、火星で起きている地震を探査し、内部の状況を明らかにしようとする点にあります。火星内部を探査することで、太陽系の地球型惑星がどのようにして形成されたのか、という手がかりをつかむことができると考えられています。