2018年5月2日水曜日

雨が降ったときの匂い

5月の雨が降っています。毎日晴天ばかりだと雨不足になってしまいますから、適度な雨も必要です。

NHKラジオの「夏休み子ども科学電話相談」で、毎年寄せられる質問に「雨が降ると、どうして匂いがするのですか」という質問です。みなさんはそんな匂いを感じることはありますか。コンクリートに囲まれたオフィス街の真ん中で過ごしていると、なかなか感じないかもしれませんが、ちょっとした植え込みなどでも感じられるものです。

この匂いは「ゲオスミン(ジオスミンとも呼ばれます。英語では geosmin)」という物質です。土の中の微生物がつくりだすもので、もともと土の中に含まれています。雨が降ることで土の表面がわずかにかき乱されて、内部のゲオスミンが空気中に出てきて、私たちはこの匂いを感じるそうです。

「雨の匂い」と表現されますが、「カビのような匂い」と表現する人もいます。実は、人間はこのゲオスミンの匂いにはとても敏感で、ほんのわずか(5 ppt = 5兆分の1)の濃度でも、この匂いを感じるとか。あまりに高い濃度では具合が悪くなりそうですが、雨の匂いは落ち着く、という人もいるようです。図書館の地下書庫に入ると、なんとなく落ち着きますが、それはわずかなカビの匂いに理由があるのかもしれませんね。

2018年5月1日火曜日

松前公園の桜

今日から5月になりました。東京では5月にもなれば木々の緑が美しい季節ですが、北海道は例年であればちょうど今頃から桜が咲きはじめます。梅と桜が同時に咲くのが北海道の春です。

北海道の桜の名所といえば、松前町の松前公園でしょうか。北海道の南西部、江戸時代に築かれた松前城を中心とした公園です。函館市や松前町、大沼公園などがある渡島半島は北海道の中でも暖かい地方ですので、桜もほかの地域より早く咲きはじめます。

松前公園には、250種1万本以上の桜が植えられており、およそ1ヶ月にわたっていろいろな桜の花が咲き続けます。桜といえばソメイヨシノという名前しかピンとこない私ですが、松前町ツーリズム推進協議会が運営している「北海道松前藩観光奉行」のこちらのページには松前公園にある桜の種類が写真付きで紹介されています。いろいろな名前の桜を見ると、名前でどんな花かを想像できるものから、そうではないものまで、多様なものがあります。

多数の品種の桜を楽しむことのできる松前公園。桜を楽しみたい方々には、来年以降のこの季節の旅行先として最適かもしれません。

2018年4月30日月曜日

宇宙の外側はどうなっているか

物理学の授業では、毎回の授業内容の確認問題と合わせて、学生がどのような感想をもったか、何か質問があるか、などを自由に記述してもらうことにしています。多数の質問が寄せられますが、もっとも多いものの一つが、
宇宙の外側はどうなっているのか
というものです。

これは実に難しい質問でもあります。私たちが知っている物理法則は、「この」宇宙の内側で成立すると考えられているものです(例外はブラックホールの内側)。言い方を変えれば、この宇宙ではないところ(たとえば「宇宙の外側」や「別の宇宙」)では私たちの知っている物理法則が適用できるかどうか、を判断する材料はなにもありません。

そういう意味では、この宇宙の外側にどういうものが存在しているのか、どのような世界になっているのか、ということについての現代物理学の答えは「わからない」ということです。それでも、宇宙は「真空」から生じたという理論が広く受け入れられていますので、「真空」という言葉はキーワードになるかもしれません。このあと、少しずつ宇宙論についても紹介することにしましょう。

2018年4月29日日曜日

古い書籍を探して

読んでみたいなぁと思う書籍があったので、インターネットで Amazon や大型書店の検索機能で探してみましたが、「在庫はありません」あるいは「現在お取り扱いできません」という結果が返ってきました。欲しいと思った書籍が、いつでもすぐに手に入るという状況はなかなか実現できません。近年は Amazon をはじめとしたインターネット通販の登場もあり、書籍はかつてよりも格段に入手しやすくなりましたが、それでも古い書籍の取り扱いはほとんどないようです(場合によっては古本のリンク先を紹介されています)。

年間、おおよそ80,000点もの書籍が新たに出版されているという統計があります。一日あたりにすると 200点以上の新刊書籍が発行されているということになります。これほどの数であれば、これまで発行されたすべての書籍を書店や出版社、あるいは流通業者が保管しておくことがいかに負担であるか、を理解できるような気もします。

最近の書籍は電子化されたものも同時に(あるいは時期をずらして)発行されることも多いようで、保管に特別な空間を必要としない電子版が今後はさらに増えていくことでしょう。

読者の観点から言えば、古い書籍を先に電子化してアーカイブしていただけると需要があるはず。なかなかそうならないのは、きっと権利処理の関係が大変なんだろうなぁ、と思っておりましたが、実際は古い書籍の点数が膨大すぎて、とても作業が現実的ではないということが事実かもしれませんね。

私の読みたいと思っていた書籍(1960年の出版物)は、勤め先の図書館にありましたので、連休明けにでも借りに行くことにします。こういう古い書籍をすぐに確認できる図書館は、ありがたい存在です。

2018年4月28日土曜日

ゴールデンウィーク

毎年恒例の大型連休。人によっては、今日から9連休という方も多いとか。「ゴールデンウィーク」という言葉は、英語圏で使っても通じない、いわゆる和製英語です。英語で表現しようとすれば、“long vacation” とか “long holidays” でしょうか。

インターネットで提供されている『語源由来辞典』によれば、ゴールデンウィークとは1951年(昭和26年)に公開された映画の広報活動に合わせて、かつての映画会社「大映」で作り出した造語とか。

この時期になるとよく耳にするゴールデンウィークですが、NHKではこの言葉は使わないことが、NHK放送文化研究所のホームページで説明されています。NHKでは「大型連休」あるいは「春の連休」などのように表現するとか。なぜ、このようにしているかという理由が上記のリンク先に示されているので、ぜひご確認ください。

連休とはいえ、本来は5月1日・2日は平日ですから、通常どおりに勤務・通学する人もいることでしょう。朝の通勤・通学の電車は空いているのかもしれませんね。現代社会では多くの人が一斉に休日を取ってしまうと、世の中が動かなくなってしまうようになりました。私が子どもだったころは、日曜日や祝日は(今から見れば)不便だったような気もします。逆に土曜日は午前中は普通に学校もありましたし、仕事もあったのですが、今は社会的には休日であることが当たり前、という雰囲気ですね。

さて、皆様のゴールデンウィークはどう過ごされるのでしょうか。健康と事故には気をつけてお過ごしください。

2018年4月27日金曜日

バナナの斑点「シュガースポット」

昨日紹介した、バナナの話。バナナはバショウ科バショウ属に分類されます。バショウ属の植物には、繊維として利用されるマニラ麻があります。ちなみに、湿地に見られる美しいミズバショウは、サトイモ科の植物です。

バナナは熟すると黄色くなり、そのころには表面に黒い斑点が出てきます。この斑点のことを「シュガースポット」と呼ぶそうですが、これは果実の糖度が高くなった状況を示す目安になるそうです。

なぜシュガースポットが出現するかというと、バナナの皮に含まれているポリフェノール類が酵素によって酸化され、褐色の物質へと変化するため。「熟する」ということは、言い方を変えれば細胞の老化が進んでいることになります。細胞が老化すると、細胞内のつくりも弱くなり、細胞内に蓄えられていたポリフェノールがもともと存在していた場所を離れて、酸化酵素と触れ合ってしまうために起こる現象です。

実は、バナナの果実が熟することと、シュガースポットの出現するしくみとは関係がないことがわかっています。あくまで目安というわけです。シュガースポットが出現した頃にはすでに十分に果実は甘くなっているので、おいしく食べられるというわけです。シュガースポットが出現したけれど、今は食べられない! というときは、冷蔵庫に入れてしまいましょう。バナナの皮は黒ずんでしまいますが、バナナは13℃以下では追熟できないので、熟しすぎることなく、食べることができるのです。

2018年4月26日木曜日

バナナの追熟

先日、スーパーマーケットで「青い」(熟していないような)バナナを見かけました。最近のバナナは甘い食感を消費者が好んでいるということなのか、かなり熟しているものが店頭に並べられていることが多いようで、青いバナナはずいぶん久しぶりに見たような気がします。私が学生だった頃は、バナナは青いものがかなりあったように思ったのですが…   私はそれほど甘くないバナナが好みなのですが。

日本バナナ輸入組合の発表によると、日本の2016年のバナナ輸入量はおよそ96万トンで、どのような国々から輸入されているのかというと、

  1. フィリピン(78.5%)
  2. エクアドル(16.5%)
  3. グァテマラ(1.8%)

が上位3カ国となっています。

バナナは熟した状態で輸入されるのではなく、現地では熟す前の状態で収穫されます。熟した状態では傷みやすいことと、害虫がつくことを防ぐためたとか。日本に輸入された後、検疫を受けたら、まだ熟していないバナナを追熟するための施設に運ばれます。この施設では温度管理された「室(むろ)」と呼ばれる部屋で、エチレンガスや二酸化炭素、湿度をコントロールしながら保管されます。エチレンガスは果実の呼吸を盛んにし、果実を柔らかくしたり、糖分を高めたりするはたらきをするものです。

八王子には「バナナ熟成センター」と看板を掲げた施設があり、どういうことをしているのか疑問だったのですが、こういうことをしていたのですね。それほど追熟の進んでいないバナナをもう少し見かけることができるようになると、嬉しいのですが。

2018年4月25日水曜日

「チョウ」と「ガ」の違いはなに?

春になるといろいろな種類のチョウが飛び始め、花から花へと飛び移っていくようすを見かけます。同時に夕方を過ぎるとガが目立ち始めます。街頭近くにはずいぶん多くのガが集まっています。

朝、玄関付近に止まっている虫がチョウなのか、あるいはガなのか、どっちなのだろうと思うことがあります。きれいな羽だからチョウなのか、羽を開いて止まっているからガなのか、そういえば見分け方がはっきりしないように思います。どのように分類されているのでしょうか。生物の分類は広い順に、ドメイン/界/門/綱/目/科/属/種と分類されていきます。たとえば私たちヒトは、「真核生物/動物界/脊椎動物門/哺乳綱 /サル目/ヒト科/ヒト属/Homo sapiens」と学術的に分類されています。

実は、チョウもガも鱗翅目(りんしもく)というグループの昆虫。この鱗翅目とは、大きな2対の羽を持ち、羽にうろこ状の鱗粉(りんぷん)がならんでできた模様を持つものです。この鱗翅目をさらにグループ分けして、セセリチョウ科・アゲハチョウ科・シロチョウ科・シジミチョウ科・シジミタテハ科・タテハチョウ科の6つの科に属しているものを「チョウ」、それ以外の鱗翅目のものを「ガ」と呼んでいます。

チョウにも夜を好んで活動するワモンチョウやジャノメチョウなどもいますし、ツバメガというガは美しい羽をもっています。

チョウという名もガという名も、結局は人間の都合でつけたもの。それでも人間がつけた名である以上、名付け方のルールや名前の由来があるのですね。

2018年4月24日火曜日

科学技術の光と影

先週の19日(木)に、横浜サイエンスフロンティア高等学校で2年生を対象とした「進路ガイダンス」という催しがあり、法政大学を紹介するために出かけてきました。横浜サイエンスフロンティア高等学校は、横浜市立の学校で、ほとんどの生徒は理科に強い関心をもっているとのこと。そのため、やや科学の内容に近い話をしました。

科学技術は私たちの生活を便利にすることに大いに役立っていますが、その陰にはいろいろな課題があったります。ある物体に光が当たれば、当たった部分は明るいけれども、必ず影ができるのと同じこと。

明治から昭和の時代に銅鉱石を採掘し、精錬作業を行っていた足尾銅山(栃木県)についての話をしました。明治期の足尾銅山で製造された銅は、当時の外貨の獲得源として重要な輸出品でした。最盛期には日本で生産される銅の 40パーセントを占めるまでになっていきます。この生産量の高さは、海外からの技術を積極的に取り入れ、さらに日本独自の工夫を加えて、より効率を高めたのでした。足尾は鉱山で働く人々に加え、技術を学ぶために海外からの技術者が訪れ、大変に賑わっていた様子が写真に記録されています。これは足尾銅山の輝かしい「光」の部分でした。

しかし、広く知られているように、足尾銅山は日本最初の公害をもたらしてしまったのです。重金属が渡良瀬川に流れ込み、渡良瀬川流域に鉱毒被害を広めました。当時の技術によって水質汚染は改善しましたが、排気中に放出される亜硫酸ガスの除去は残念ながら不可能でした。そのため、排煙が流れていった方向の山々には、今でも緑がありません。これは足尾銅山とその周辺の人々の生活に刻まれた「影」の部分です。

すべてのものごとにはこのように見方によっていろいろな側面があり、ただニュースを見聞きするだけでなく、「どうしてだろう」とか「こういう考え方はできないのかな」と自分で考えることが大切である、ということを話したのでした。

みなさんもこのようにして日々のニュースを見聞きすれば、いろいろな考え方が存在することに気がつくことでしょう。

2018年4月23日月曜日

歩測を体験する

皆さんは、自分の一歩がどれだけの長さか、知っていますか。実際に測る機会がない、というのが実情ではないでしょうか。しかし、この「歩いて長さを測る」ことは、かつて伊能忠敬が日本地図を作り上げたときに行った方法です。

私が担当している、「自然科学特講」の授業では、からだを使って、数のしくみや私たちの生活の中でどのように使われているかを再認識するということを行っています。

実際に自分の一歩を測ってみると、意外と長かったり、あるいは短かったりという印象を受けるようです。この歩幅と、何歩歩いたかを知ることができれば、距離がわかります。このような体験をすることで、街中での距離感を再認識することができるようです。実際に、学校から自分の家まで歩測して距離を測った、という学生もいました。地図を見て、どれくらいの時間がかかるかを予測することにも応用できますね。

授業で行ったように、わざわざ巻尺で計測しなくても、同じ大きさのタイルが敷き詰められた部屋やホールでも計測できます。タイルの一辺の長さを測っておけばいいわけです。計測するとき、一歩だけの長さを測るのではなく、10歩あるいは20歩を進んで、その距離を歩数で割ったほうがより正確な値がでます。一歩だけだと、意識するせいか、「いつもの歩幅」と変わってしまうようです。

皆さんも、どこか広い場所を見つけて、一度測ってみたらいかがでしょうか。